「国産」にこだわりすぎて大丈夫?AI・半導体時代に日本が目指すべき本当の強さ

国産にこだわりすぎて大丈夫? 資産運用
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「国産」と聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか。

先日、妻の誕生日においしいお肉が食べたいとのリクエストで、スーパーにお肉を買いに行きました。
オーストラリア産・アメリカ産牛肉もおいしいのですが、やはり目が行くのは国産牛肉でした。

食品なら「安心」「高品質」、自動車や家電なら「日本の技術力」といった、どちらかといえば良い印象を持つ人が多いと思います。

私自身も、日本企業が国内で技術を開発し、日本の産業を強くしていくことには大いに期待しています。

特にAI、半導体、クラウドなどは、これからの経済だけでなく安全保障にも関係する重要な分野です。

しかし、ここで一つ疑問があります。

「国産であること」と「日本の産業が強くなること」は、本当に同じなのでしょうか。

私は、ここを分けて考える必要があると思っています。

日本で「国産」が再び注目されている

AIや半導体をめぐって、日本でも国内の技術基盤を強化しようという動きが進んでいます。

経済産業省も2026年6月に半導体・デジタル産業戦略を改訂し、AI、半導体、データ、計算基盤、通信、電源、人材、セキュリティまで含めた「AI・半導体エコシステム」の構築を掲げています。

これは非常に重要な動きだと思います。

海外企業にすべてを依存してしまえば、国際情勢が悪化したときに必要な半導体やデジタルサービスを確保できなくなる可能性があります。

コロナ禍で経験した半導体不足を考えても、一定の国内生産能力を確保することには大きな意味があります。

つまり私は、「国産化そのものが悪い」とは全く考えていません。

問題は、その先です。

「日本だけで作る」が目的になると危ない

日本には、かつて世界を席巻した産業がいくつもあります。

テレビ、半導体、携帯電話、家電……。

1980~90年代には「メイド・イン・ジャパン」そのものがブランドでした。

ところが、その成功体験があるからこそ、

「日本独自の高い技術を作れば世界でも売れる」

という考え方に陥る危険もあります。

代表的なのが、いわゆる「ガラパゴス化」です。

日本市場には非常に適していて技術的にも優秀なのに、世界標準から離れてしまい、海外市場では広がらない。

実は経済産業省自身も、デジタル産業について「かつてのガラパゴス化を避けながら」産業を育成する重要性を指摘しています。

ここに、日本のテクノロジー政策を考えるうえで非常に重要なヒントがあると思います。

「国産率」より「世界に必要とされるか」

日本が目指す国産のかたち

私が重要だと思うのは、

何%を日本国内で作ったかではなく、世界の産業からどれだけ必要とされているか

という視点です。

半導体は、その分かりやすい例です。

現在の半導体産業は、一つの国ですべてを作っているわけではありません。

設計、製造、製造装置、材料、検査など、それぞれに強い企業が存在し、国境を越えた巨大なサプライチェーンを形成しています。

そこで日本が目指すべきなのは、

「すべて国産にすること」ではなく、「日本が抜けたら世界が困る分野を増やすこと」

ではないでしょうか。

私は、こちらの方がはるかに現実的で、強い産業政策だと思います。

「日本がすべての半導体を作る」のではなく、「日本企業にしかできない技術を持つ」という視点では、半導体材料も重要です。私が注目しているレゾナックについては、こちらの記事でも詳しく取り上げています。
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日本の半導体産業には、そのヒントがある

たとえば日本には、半導体製造装置や材料など、世界市場で存在感を持つ企業があります。

東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコ、SCREEN、信越化学などです。

これらの企業の強さは、「国産半導体を作っているから」だけではありません。

世界の半導体メーカーの設備投資が増えれば、日本企業にもビジネスチャンスが生まれる。

つまり、

世界の半導体産業の成長そのものを取り込めるポジションにいること

が大きな強みなのです。

私はここに、これからの日本企業が目指すべき一つの方向性があると思っています。

日本の半導体関連企業を考えるうえでは、個別企業だけでなく「半導体市場そのものが今どの局面にあるのか」を見ることも重要です。私は半導体市場のサイクルと2028年に向けた見通しについて、こちらの記事でも整理しています。
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AIでも同じではないか

この考え方はAIにも当てはまります。

日本独自の生成AIや大規模言語モデルを開発することには意味があります。

実際、Preferred Networksは国産LLMだけでなく、AI半導体、計算基盤、基盤モデル、ソリューションまで複数のレイヤーを開発しています。

一方で、米国には巨大な資金力と計算資源を持つ企業があります。

そこに日本企業が真正面から「全部自前」で対抗することだけが正解なのでしょうか。

私はそうは思いません。

日本には製造業、自動車、ロボット、精密機械、素材、医療など、長年蓄積してきた産業があります。

ならば、

世界最高水準のAI × 日本が得意なリアル産業

という組み合わせも、有力な戦い方ではないでしょうか。

AIそのものの国籍よりも、AIを使ってどれだけ付加価値を生み出せるか。

こちらの方が日本経済にとって重要だと思います。

AIの普及はテクノロジー企業だけの話ではありません。設備投資や金利、企業業績を通じて日本株全体にも影響してきます。AIブームと金利、日本株の関係についてはこちらの記事で詳しく考えています。
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経済安全保障と国際分業は矛盾しない

もちろん、何でも海外に任せればよいという話でもありません。

半導体、AI、クラウドなど国家の基盤になる分野については、最低限の技術や生産能力を国内に残す必要があります。

ここは経済合理性だけでは判断できません。

だから私は、

「国内に残す技術」と「世界と組む技術」を分ける

ことが重要だと考えています。

100%国産を目指すのでもなく、100%海外に依存するのでもない。

重要技術については国内基盤を確保しながら、それ以外では世界最高の企業・技術と積極的に組む。

このバランスこそ、日本に必要なのではないでしょうか。

投資家としても「国産」という言葉だけで判断しない

これは日本株を見るときにも重要だと思います。

「国策」「国産AI」「国産半導体」という言葉が出ると、どうしても関連銘柄に注目が集まります。

しかし投資家として見るなら、

「国産だから成長する」

では少し単純すぎます。

私ならむしろ、

世界市場で競争力があるか、世界の成長を取り込めるか、その企業でなければならない技術を持っているか

を見たいと思います。

国内政策による支援は追い風になります。

しかし、補助金によって工場を作ることと、その企業が10年、20年と世界で利益を上げ続けられることは別問題です。

これは国策銘柄を見るときに、忘れてはいけないポイントだと思います。

半導体についてもう少し詳しく知りたい方へ
AIや半導体関連のニュースを理解するには、「半導体はどのように作られ、どの企業がどの工程を担っているのか」を知っておくと理解しやすくなります。
私自身も投資先を考える際、個別企業だけでなく半導体産業全体の仕組みを理解することが重要だと感じています。
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まとめ|「国産」をゴールにしてはいけない

日本がAIや半導体などの重要技術を国内に持つことは、これからますます重要になります。

しかし、

「国産化=日本産業の復活」ではありません。

日本だけで技術を囲い込み、日本市場だけを見ていては、再びガラパゴス化する可能性があります。

私が理想だと思うのは、

「日本だけで全部作れる国」ではなく、「日本がいなければ世界が困る国」です。

半導体製造装置でも、材料でも、AIを活用した製造業でも構いません。

世界の産業の中で「ここは日本に任せたい」と言われる領域を一つでも多く持つ。

それこそが、これからの日本に必要な「国産」のあり方ではないでしょうか。

参考資料・公式サイト

日本政府もAI・半導体を重要な産業基盤と位置づけ、経済安全保障と産業競争力の両面から政策を進めています。詳しい政策については、経済産業省の「半導体・デジタル産業戦略」で確認できます。
出典:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」

「国内に重要技術を残しながら、世界と連携する」という点では、Rapidusの取り組みも興味深い事例です。国産半導体の復活を目指しながら、海外企業・研究機関とも連携して最先端技術の確立を進めています。
Rapidus公式サイト

実際、Preferred Networks(PFN)は、AI半導体、計算基盤、生成AI基盤モデル、AIプロダクト・ソリューションという4つのレイヤーを自社で開発しています。
「国産AI」という言葉だけでなく、半導体からAIモデル、実際のサービスまで一体で開発している点は、日本のAI産業を考えるうえで興味深い取り組みです。

Preferred Networks(PFN)公式サイト「事業内容」

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