AIブームによって、半導体業界への注目が急速に高まっています。
生成AI、データセンター、HBM(高帯域幅メモリ)などの需要が拡大する一方、世界各地では半導体工場への巨額投資も進んでいます。
そこで気になるのが、
「現在の半導体好況はいつまで続くのか?」
という点です。
Gartnerは2026年7月の予測で、世界の半導体設備投資について2026年に18.4%増、2027年にも12.2%増としたうえで、次の循環的な一服は2028年になるとの見方を示しています。
今回は、2026~2030年の半導体サイクルを考えながら、2028年前後に何が起こる可能性があるのか、投資家目線で整理してみます。
半導体には「好況と不況のサイクル」がある

半導体業界を理解するうえで重要なのが、シリコンサイクルです。
半導体需要が増加すると、
需要増加
↓
半導体不足
↓
半導体価格上昇
↓
メーカーの利益増加
↓
設備投資・増産
↓
供給能力増加
↓
供給過剰
↓
半導体価格下落
↓
設備投資縮小
という循環が起こりやすくなります。
つまり、需要が強いからといって、半導体企業の業績が永遠に伸び続けるわけではありません。
むしろ、好況時に行われた巨額の設備投資が数年後の供給増加につながり、次のサイクル転換を引き起こすことがあります。
2026年はAI需要を背景に設備投資が急拡大
現在の半導体市場をけん引している最大の要因は、やはりAIです。
Gartnerは2026年の世界半導体設備投資が前年比18.4%増、2027年にも12.2%増になると予測しています。
AI半導体への需要拡大に対応するため、半導体メーカーが積極的に生産能力を増強しているためです。
SEMIの2026年第2四半期予測でも、世界の300mm前工程装置投資は2026年に過去最高となる1,420億ドルに達すると予測されています。
つまり2026年は、
「AI需要の急増に供給側が追いつこうとしている段階」
と考えることができます。
2027年は供給能力増加が本格化
設備投資を決めても、すぐに半導体の供給量が増えるわけではありません。
工場建設、製造装置の搬入、試験稼働、量産立ち上げなどには時間がかかります。
そのため、2025~2026年に決定された大型投資の成果が徐々に現れてくるのが、2027年以降になると考えられます。
SEMIは300mm半導体の生産能力が2026年に7%増加し、その後2029年まで年間約7%のペースで拡大すると予測しています。
ここから半導体市場は、
「需要が供給を上回る市場」から「供給能力が需要に追いついてくる市場」
へ徐々に変化する可能性があります。
2028年が半導体サイクルの転換点?
ここが今回の最大のポイントです。
Gartnerは2026年7月時点の予測で、
「次の循環的な一服は2028年」
との見方を示しています。
ただし、これは
「2028年に半導体不況が来る」
という意味ではありません。
SEMIの最新予測では、300mmファブ装置投資は2028年にも前年比6%増加するとされています。
つまり2028年は、
半導体需要が突然なくなる年ではなく、これまでの供給不足から供給能力拡大へと市場の重心が移っていく可能性のある年
と考えた方が分かりやすいでしょう。
供給能力は2028年に向けて大きく増える
SEMIによると、世界の300mm半導体生産能力は2024年末から2028年にかけて年平均約7%で拡大し、2028年には月産約1,110万ウェーハに達すると予測されています。
さらに7nm以下の先進プロセスでは、
2024年:約85万枚/月
↓
2028年:約140万枚/月
と、約69%もの生産能力増加が予測されています。
AI需要が伸び続けたとしても、供給側も猛烈な勢いで設備を増強していることが分かります。
すべての半導体が同じサイクルになるわけではない
ここは投資を考えるうえで非常に重要です。
「半導体」と一括りにされていますが、実際には製品ごとに需給環境が大きく異なります。
NANDフラッシュ
NANDは比較的市況変動の大きい分野です。
(NANDについてはキオクシアの分析からも詳細を確認出来ます。)
供給能力が増えすぎると価格競争が起こりやすく、
増産 → 在庫増加 → NAND価格下落 → メーカー利益減少
という流れには注意が必要です。
キオクシアなどのメモリメーカーを見る場合には、業績だけでなくNAND価格や在庫水準にも注目したいところです。
汎用DRAM
DRAMについても典型的なメモリサイクルが存在します。
供給能力増加が需要を上回れば、市況が悪化する可能性があります。
一方で、AIサーバー向け需要の拡大によって従来とは異なる構造変化も起きています。
HBM
AIサーバーの性能向上には大量の高速メモリが必要となるため、HBM需要は中長期的に拡大する可能性があります。
そのため、
「DRAM市場が弱くなる=すべてのメモリ企業が弱くなる」
とは限りません。
AI GPU・アクセラレータ
生成AIの学習だけでなく、今後はAIを実際に利用する「推論」の拡大も期待されています。
データセンター投資が継続すれば、AI GPUやアクセラレータについては比較的長い成長サイクルとなる可能性があります。
先端ロジック
2nm以下を中心とする先端半導体についても、AI・HPC需要が追い風です。
SEMIは2nm以下の生産能力について、2025年の月産20万枚未満から2028年には50万枚超へ拡大すると予測しています。
半導体製造装置
東京エレクトロンやアドバンテストなどを見る場合、注意したいのが設備投資サイクルです。
製造装置メーカーの業績は、半導体メーカーが設備を増強する局面で大きく伸びます。
しかし株式市場は将来を先取りするため、
実際に設備投資が減少する前から株価がピークアウトする可能性
があります。
2026~2030年の半導体サイクルを整理
今回の予測を簡単に整理すると、次のようになります。
2026年:需要ピーク期
AI・データセンター投資が拡大。半導体メーカーも積極的に設備投資。
↓
2027年:供給能力増加の準備期
新工場や増設ラインが順次稼働。供給能力増加が本格化。
↓
2028年:サイクル転換期
供給能力が需要に追いつき始め、需給が正常化。一部製品では供給過剰リスクも。
↓
2029年:供給過剰懸念期
製品によっては在庫増加や価格下落が発生する可能性。
↓
2030年:調整・次の成長期
在庫調整が進み、新しいAI・ロボット・自動運転などの需要によって次の成長サイクルへ。
※これは現時点の設備投資・生産能力予測から考えたシナリオであり、実際のサイクル時期はAI需要や世界景気などによって前後する可能性があります。
投資家は2028年ではなく「2027年」から注意したい
投資家にとって重要なのは、
「2028年になったら半導体株を売ればよい」
という単純な話ではありません。
株価は将来の業績を先取りして動くからです。
仮に2028年に半導体需給が悪化すると市場参加者が予想すれば、2027年の段階から株価に織り込まれる可能性があります。
そのため2027年頃から、
- 半導体メーカーの設備投資計画
- 製造装置メーカーの受注
- NAND・DRAM価格
- 半導体在庫
- データセンター設備投資
- HBM需要
- AI半導体需要
などを定期的に確認していくことが重要だと考えます。
キオクシア・東京エレクトロン・アドバンテストを見る視点
今回の半導体サイクルを、具体的な企業に当てはめてみます。
NAND市況の影響を強く受けるため、供給能力増加とNAND価格の動きが重要。今回の3社では特に半導体サイクルを意識したい企業です。
世界的な半導体設備投資拡大の恩恵を受けます。一方で、設備投資の伸び率鈍化を株式市場が先取りする可能性には注意が必要です。
AI半導体・HBMなど高性能半導体のテスト需要が重要です。単純な半導体生産数量だけでなく、高性能化・複雑化によってテスト工程の重要性が増す可能性があります。
つまり、同じ半導体関連株でも、
「何の需要によって利益が増えている企業なのか」
を見る必要があります。
まとめ|2028年は「半導体不況」ではなくサイクル変化に注目
AIブームによって、半導体市場は大きな成長局面を迎えています。
しかし、その需要に対応するため世界中で巨額の設備投資が行われています。
Gartnerが2028年に循環的な一服を予想していることや、SEMIが2028年に向けて大幅な生産能力増加を予測していることを考えると、
2028年前後は「供給不足」から「供給能力拡大」へ市場の重心が変わる時期
として注目しておく価値がありそうです。
ただし、AI、HBM、先端ロジックなどでは引き続き高い成長が期待される可能性があります。
したがって、
「半導体だから買う・売る」ではなく、メモリ・AI半導体・先端ロジック・製造装置など分野別にサイクルを見ること
が今後さらに重要になるのではないでしょうか。
そして投資家としては、2028年を待つのではなく、2027年頃から受注・在庫・価格・設備投資の変化をチェックしていきたいところです。
参考資料
・Gartner「Semiconductor Capital Spending」
・SEMI「300mm Fab Outlook」
※本記事は公開情報をもとにした個人的な考察であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。


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