AIブームで話題の半導体業界の仕組みを初心者向けに解説|NVIDIA・キオクシア・東京エレクトロンは何をしている会社?

半導体業界の仕組みの説明図 資産運用

生成AIの普及によって、半導体関連企業のニュースを目にする機会が増えました。

特に最近1か月は株式市場においても半導体銘柄として非常に注目されている業界です。

NVIDIA(エヌビディア)、TSMC、東京エレクトロン、アドバンテスト、レゾナック、キオクシア……。

どれも何となく「半導体関連企業」とひとくくりに呼ばれますが、いまいちよくわからない業界というのが世間一般の認識ではないでしょうか?

実はそれぞれ全く違う仕事をしています。

半導体業界は、一つの会社だけで製品を完成させるのではなく、

設計 → 材料 → 製造装置 → 半導体製造 → 加工・検査 → パッケージ → 電子部品 → 最終製品

という巨大な分業によって成り立っています。

今回は、半導体業界の「川上から川下まで」を、具体的な企業名を挙げながら初心者向けに整理してみます。


半導体業界の川上から川下までの流れと主要企業の役割の説明図

半導体業界の全体像

まず、大まかな流れを見てみます。

半導体の設計

NVIDIA・AMD・Broadcom

  ↓

半導体材料

信越化学工業・SUMCO・レゾナック

  ↓

半導体製造装置

東京エレクトロン・ASML・Applied Materials

  ↓

半導体の製造

TSMC・Samsung・Intel・キオクシア

  ↓

加工・検査

ディスコ・アドバンテスト

  ↓

後工程・先端パッケージ

ASE・Amkor・TSMC

レゾナック・京セラなどの材料・パッケージ企業

  ↓

電子部品・モジュール

村田製作所・TDK・京セラ

  ↓

最終製品・サービス

Apple・Microsoft・Amazon・Google・自動車メーカーなど

こうして見ると、「半導体関連企業」と一括りにしても、各社の役割が大きく違うことが分かります。


半導体を「設計する」会社

代表的なのがNVIDIA(エヌビディア)です。

NVIDIAは生成AI向けGPUで世界的に有名になりました。

しかし、NVIDIA自身が巨大な半導体工場を所有して、そこでGPUを大量生産しているわけではありません。

NVIDIAの重要な仕事は、

「どんな性能・構造の半導体を作るのかを設計すること」

です。

このように、自社で大規模な製造工場を持たず、半導体の設計を中心に行う企業を「ファブレス」と呼びます。

代表企業には、

  • NVIDIA
  • AMD
  • Broadcom
  • Qualcomm

などがあります(上記4社は全て米国企業)。

NVIDIAが設計した半導体を、実際に製造する企業の代表がTSMCです。

つまり、

NVIDIA=設計する

TSMC=実際に作る

という分業になっています。


半導体の「材料」を作る会社

半導体を製造するためには、さまざまな高性能材料が必要です。

代表的な日本企業として、

  • 信越化学工業
  • SUMCO
  • レゾナック

などがあります。

例えば信越化学工業やSUMCOが手掛ける代表的な製品がシリコンウェハーです。

シリコンウェハーは、半導体回路を作り込んでいくための土台になります。

一方、レゾナックは少し違ったところに強みがあります。

特に注目されているのが、半導体の後工程・先端パッケージ向け材料です。

生成AI向け半導体では、

GPU+HBM(高性能メモリ)+その他の半導体

などを高度に組み合わせる技術が重要になっています。

その際に、接着・絶縁・放熱・基板関連などの高性能材料が必要になります。

レゾナックが「総合化学メーカー」から「半導体材料メーカー」へ転身しようとしている背景には、この大きな変化があります。

レゾナックについては最近、東洋経済にて特集されています。
https://toyokeizai.net/feature/6a56ca6db576224ac2000000


半導体を「作るための機械」を作る会社

代表的な日本企業が東京エレクトロンです。

半導体工場では、シリコンウェハーの上に非常に細かな回路を形成していきます。

そのためには、

  • 膜を形成する
  • 回路パターンを作る
  • 不要な部分を削る
  • 洗浄する

といった工程を何度も繰り返します。

そのための製造装置を供給するのが半導体製造装置メーカーです。

代表企業には、

  • 東京エレクトロン
  • ASML
  • Applied Materials
  • Lam Research

などがあります。

つまり東京エレクトロンは、

「半導体そのものを売る会社」ではなく、「半導体を作るための機械を売る会社」

です。

TSMCやSamsungなどが半導体工場への設備投資を増やせば、製造装置メーカーにも大きな需要が生まれます。


半導体を「実際に製造する」会社

代表格がTSMCです。

NVIDIAなどから受け取った設計データを基に、実際に半導体を製造します。

このような半導体の受託製造会社をファウンドリーと呼びます。

代表企業には、

  • TSMC
  • Samsung

などがあります。

一方、日本のキオクシアNAND型フラッシュメモリを開発・製造しています。

NVIDIAのGPUが、

「計算するための半導体」

だとすれば、キオクシアのNANDは、

「データを保存するための半導体」

と考えると分かりやすいと思います。

生成AIでは膨大なデータを保存する必要があるため、データセンター向けSSDなどの需要拡大も注目されています。


半導体を「切る・削る」会社

ここで登場する日本企業がディスコです。

半導体はウェハー上に多数作られた後、それぞれのチップへ切り分ける必要があります。

また、高性能半導体ではウェハーを非常に薄く加工する技術も重要です。

ディスコは、

切る・削る・磨く」

といった精密加工技術に強みを持っています。

一見すると地味な工程ですが、AI半導体や先端パッケージの高度化によって、精密加工の重要性も高まっています。


半導体を「検査する」会社

代表的な日本企業がアドバンテストです。

製造した半導体が設計通り正常に動作するかを検査する必要があります。

特にAI向けの高性能半導体は複雑で高価です。

半導体が高性能になるほど検査も難しくなり、高性能なテスト装置が必要になります。

そこで恩恵を受けているのがアドバンテストです。

イメージとしては、

半導体の性能向上

検査が複雑になる

高性能なテスターが必要になる

アドバンテストのビジネスチャンスが増える

という関係です。


「後工程・先端パッケージ」が重要になっている

最近の半導体業界を理解するうえで非常に重要なのが後工程です。

これまでは、

半導体回路をどこまで細かくできるか

という「微細化」が性能向上の中心でした。

しかし、微細化の難易度とコストが上昇しています。

そこで重要になってきたのが、

複数の高性能半導体を組み合わせて性能を高める

という考え方です。

AI半導体では、

GPU+HBM+その他のチップ

などを高度に組み合わせます。

ここで重要になるのが先端パッケージです。

この分野では、

  • TSMC
  • ASE
  • Amkor

などのほか、材料分野でレゾナック、パッケージ・基板分野で京セラなども関係します。

AI半導体の性能競争が、

「前工程の微細化だけ」

から、

「前工程+後工程・先端パッケージ」

へ広がっていることが、レゾナックなど日本の材料メーカーにとって大きなチャンスになっています。


半導体の周りには「電子部品」も必要

半導体だけではスマートフォンや自動車、AIサーバーは完成しません。

そこで登場するのが、

  • 村田製作所
  • TDK
  • 京セラ

などの電子部品メーカーです。

例えば村田製作所は、積層セラミックコンデンサ(MLCC)や高周波部品、通信モジュールなどを手掛けています。

スマートフォンだけでなく、自動車やAIサーバーなどでも多数の電子部品が必要です。

そのためAI市場の拡大は、半導体メーカーだけでなく、その周辺の電子部品メーカーにも波及していきます。


NVIDIAのAI半導体ができるまで

最後に、一つの流れとして整理してみます。

NVIDIA
「AI向けGPUを設計する」

  ↓

信越化学・SUMCOなど
「半導体の材料を供給する」

  ↓

東京エレクトロンなど
「半導体を製造する装置を供給する」

  ↓

TSMC
「NVIDIAの設計したGPUを製造する」

  ↓

ディスコ
「ウェハーを削る・切る」

  ↓

アドバンテスト
「半導体が正常に動くか検査する」

  ↓

レゾナックなど
「先端パッケージに必要な材料を供給する」

  ↓

村田製作所・京セラなど
「電子部品・基板・パッケージなどを供給する」

  ↓

AIサーバー

  ↓

Microsoft・Amazon・Googleなどのデータセンター

  ↓

生成AIサービス

こうして見ると、NVIDIAのAI半導体が売れることで恩恵を受ける企業は、NVIDIAだけではないことが分かります。


半導体関連企業を投資家目線で整理

分野代表企業主な役割
半導体設計NVIDIA・AMDGPU・CPUなどを設計
半導体材料信越化学・SUMCOシリコンウェハーなど
後工程材料レゾナック接着・絶縁・放熱・基板関連材料など
製造装置東京エレクトロン・ASML半導体を作る装置
半導体製造TSMC・Samsung半導体を実際に製造
メモリキオクシア・Micron・SK hynixNAND・DRAMなど
精密加工ディスコ切断・研削
半導体検査アドバンテスト半導体テスター
パッケージASE・Amkor・京セラなどチップを実装・保護・接続
電子部品村田製作所・TDKコンデンサ・高周波部品など

まとめ|「半導体株」でも儲かる仕組みは全く違う

半導体業界について調べてみると、「半導体関連株」という言葉だけでは企業の特徴を判断できないことが分かります。

NVIDIAは設計

東京エレクトロンは製造装置

TSMCは製造

ディスコは切る・削る

アドバンテストは検査

レゾナックは材料

村田製作所や京セラは電子部品・パッケージなど

それぞれ違う場所から半導体産業を支えています。

個人的に今回調べて特に興味深かったのが、AIの普及によって「後工程」の重要性が高まっていることです。

半導体というと、これまでは「どれだけ微細化できるか」という前工程に目が向きがちでした。

しかしAI半導体では、GPUやHBMなど複数のチップをどのように組み合わせるかが性能を左右するようになっています。

今回、東洋経済で読んだレゾナックの記事で「総合化学メーカーから半導体材料メーカーへの転身」が取り上げられていた意味も、半導体業界全体の流れを整理すると理解しやすくなりました。

投資する際にも単純に「AI関連だから」という理由だけではなく

その会社は半導体産業のどの工程で、どのように利益を得ているのか?

を見ることが大切だと感じました。

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