スーパーに行けば、3パック100円前後から買える納豆。
あまりにも身近な食品なので、「経済」や「投資」と結びつけて考えることはあまりないかもしれません。
しかし、普段何気なく買っている商品を見ながら、
「これは誰が作っているのだろう?」
「原材料はどこから来ているのだろう?」
「値上げすると、その会社の利益は増えるのだろうか?」
と考えてみると、身近な食品から経済の仕組みが見えてきます。
そこで今回は、納豆を「消費者」と「投資家」の両方の視点から考えてみます。
ただし、今回の記事はいわゆる**「おすすめの納豆関連株」を紹介する記事ではありません。**
調べてみると、「おかめ納豆」のタカノフーズや「金のつぶ」のミツカンなど、納豆業界を代表する企業は非上場で、私たち個人投資家が直接株式を購入することはできません。
そこで少し視点を変えて、
納豆 → 大豆 → 円安 → 原材料高 → 値上げ → 企業利益 → 消費者
という流れを追いながら、身近な100円前後の商品から日本経済を考えてみたいと思います。
株価やPERを見るだけが投資の勉強ではありません。
普段買っている商品の「値段がなぜ変わるのか」を考えることも、経済や企業を理解する第一歩ではないでしょうか。
納豆市場は3,000億円を突破
3,000億円の納豆市場って、どれくらい大きい?
「納豆市場は3,018億円」と言われても、正直なところ、それが大きいのか小さいのか分かりにくいと思います。
そこで身近な食品市場と比べてみます。
2025年度のアイスクリームの国内販売金額は約6,631億円。
つまり納豆市場は、ざっくり言えば、
「アイスクリーム市場の約半分」
の規模があります。
さらに少し古いデータになりますが、レトルトカレー市場は約1,000億円規模。
イメージとしては、
レトルトカレー市場 約3個分 ≒ 納豆市場
という規模です。
スーパーでは小さな一角に並んでいる納豆ですが、日本全国で積み上げると年間3,000億円を超える巨大な市場になります。
しかも納豆は、一つ100円前後の商品が中心です。
高額商品を数多く販売して3,000億円になっているわけではなく、
100円前後の商品を日本中の家庭が繰り返し購入することで形成されている3,000億円市場
というところが、納豆ビジネスの面白いところだと思います。
※各市場では調査年度や集計方法(消費金額・メーカー出荷額など)が異なるため、上記は厳密な市場比較ではなく、規模感をイメージするための参考比較です。
納豆は昔からある食品です。
そのため、「すでに成長の終わった成熟市場」という印象もあります。
ところが、全国納豆協同組合連合会のデータによると、2025年の納豆の年間消費金額(市場規模)は、
3,018億円
となり、過去最高を記録しました。
さらに、
市場規模は2011年の1,730億円から2025年には3,018億円へ。14年間で約1.7倍、年平均約4%で拡大しています。直近3年間では年5〜8%程度と成長が加速しています。ただし、その成長には販売数量だけでなく、食品インフレやメーカーの値上げによる単価上昇も含まれています。
2011年には東日本大震災の影響などもあり1,730億円まで低下しましたが、その後は長期的に拡大してきました。

背景には、
- 健康志向
- 発酵食品への関心
- 植物性タンパク質への注目
- 手頃な価格
- 商品価格の上昇
などがあります。
ただし、ここで注意したいことがあります。
市場規模が大きくなった=日本人が納豆をものすごくたくさん食べるようになった
とは限りません。
商品の値段が上がっても、金額ベースの市場規模は拡大します。
ここからすでに、「数量」と「価格」を分けて考えるという経済の視点が出てきます。
100円の納豆からインフレを考えてみる
納豆の価格には、大豆だけでなく為替、エネルギー、人件費、包装資材、物流など、さまざまなコストが関係しています。
100円前後の納豆が私たちの手元に届くまでを追ってみると、日本経済の流れが見えてきます。

納豆の値段も少しずつ上昇しています。
農林水産省の資料によると、100g当たりの平均価格は次のように推移しています。
| 年 | 国産大豆 | 輸入大豆 |
|---|---|---|
| 2019年 | 約90円 | 約70円 |
| 2022年 | 約93円 | 約70円 |
| 2023年 | 約97円 | 約75円 |
| 2024年 | 約98円 | 約76円 |
| 2025年 | 約103円 | 約78円 |
国産大豆を使用した商品では、100g当たり100円を超えるようになっています。
では、なぜ納豆が値上がりするのでしょうか。
納豆一つを作るにも、
大豆 → 工場 → 容器・フィルム → 発酵・冷蔵 → 物流 → スーパー
という長い工程があります。
そのすべてにコストがかかっています。
納豆から「円安」が見えてくる
特に重要なのが大豆です。
農林水産省によると、納豆向け大豆は約8割を輸入に頼っています。
ここで円安が関係してきます。
例えば同じ1ドルの商品でも、
1ドル=100円なら100円。
1ドル=150円なら150円。
海外の商品価格が変わらなくても、円安になれば日本企業が支払う金額は増えます。
つまり、
円安
↓
輸入大豆が高くなる
↓
納豆メーカーの原材料費が増える
↓
企業利益を圧迫
↓
値上げ
という流れが起こり得ます。
ニュースで「円安」と聞くと少し遠い世界の話に感じます。
しかし実際には、スーパーに並ぶ納豆の価格にもつながっているのです。
大豆だけではない。納豆を作るすべてが値上がりする
メーカーが負担しているのは大豆だけではありません。
例えば、
- 納豆を入れる容器
- 包装フィルム
- タレ・からし
- 電気代
- ボイラー燃料
- 人件費
- 冷蔵設備
- トラック輸送
- スーパーまでの物流費
などがあります。
原油価格が上がれば、容器や包装材、物流費などにも影響します。
人手不足が進めば、人件費や物流費も上昇します。
つまり100円前後の納豆の中にも、
為替・資源価格・賃金・物流・エネルギー
といった日本経済のさまざまな要素が詰まっています。
値上げすれば企業は儲かる?
ここは投資を考えるうえで非常に重要だと思います。
例えば納豆が、
100円 → 110円
になったとします。
売上高だけを見れば10%増えます。
しかし、その背景で原材料費や物流費などが15%上昇していれば、企業の利益はむしろ減ってしまう可能性があります。
つまり、
値上げ=企業が儲かっている
とは限りません。
だから企業分析では、
「売上高が増えた」
だけではなく、
営業利益率や原価率がどう変化しているか
を見る必要があります。
身近な納豆から、企業決算を見るときの基本的な考え方までつながってきます。
それでも値上げできる会社は強い
逆に投資家として注目したいのが、
価格決定力(プライシングパワー)
です。
原材料価格が上昇したとき、
100円 → 110円
に値上げしても消費者が買い続けてくれる会社は強い。
例えば、
「納豆ならいつもこの商品を買う」
という消費者が多ければ、それはブランド力です。
原材料価格が上昇しても販売価格へ転嫁しやすくなります。
食品メーカーを見るとき、
値上げできるか?
値上げしても販売数量が落ちないか?
という視点は非常に重要です。
納豆最大手「おかめ納豆」
スーパーの納豆売場でよく見かけるのが「おかめ納豆」です。
製造しているのはタカノフーズ。
1932年創業で、おかめ納豆は業界シェアNo.1。
北海道から九州まで生産拠点を展開し、全国へ商品を届けています。
ブランド力だけでなく、
生産・物流網そのものも競争力
と考えることができます。
そこで投資家として、
「納豆市場が伸びているなら、タカノフーズ株を買ってみるのはどうだろう?」
と思うところですが……
タカノフーズは非上場企業です。
証券会社で株を購入することはできません。
「金のつぶ」のミツカンも非上場
もう一つ有名なのが「金のつぶ」などを展開するミツカンです。
ミツカンは納豆だけでなく、
- 酢
- ぽん酢
- 調味料
- 加工食品
など幅広い商品を展開しています。
さらに海外事業も大きく、世界展開する食品企業です。
ところが、
ミツカンも非上場企業です。
つまり、納豆市場を代表する
タカノフーズ
+
ミツカン
の株を直接購入することはできません。
「上場していない」で終わらせないのが経済の勉強
ここで今回の記事の重要なポイントです。
「タカノフーズもミツカンも上場していない。では投資できないから終了」
では少しもったいないと思います。
一つの商品が私たちの手元に届くまでには、
大豆
↓
食品メーカー
↓
包装資材
↓
物流
↓
スーパー・小売
↓
消費者
というサプライチェーンがあります。
この中には上場企業もたくさん存在します。
一つの産業を調べるときには、完成品メーカーだけでなく、
「誰が材料を供給しているのか」
「誰が運んでいるのか」
「誰が販売しているのか」
まで広げて考える。
半導体など他の産業を見る場合にも使える考え方です。
納豆を販売するスーパーにも目を向ける
納豆を買う場所の多くはスーパーです。
納豆自体は100円程度の商品でも、
「納豆がなくなったからスーパーへ行こう」
となれば、
牛乳、卵、肉、野菜、冷凍食品……
と買って、会計が数千円になることもあります。
スーパーにとって納豆、豆腐、牛乳、卵などの日常食品は、
消費者に繰り返し来店してもらうための商品
でもあります。
この視点まで広げると、小売企業も納豆を取り巻く経済圏の一部になります。
消費者として考える納豆
消費者として見ると、納豆は食品インフレの時代にも魅力のある食品だと思います。
理由は、
比較的安価でタンパク質を取れること。
肉や魚、卵などが値上がりしていくなかで、
「少ない金額で栄養を取れる」
という価値はむしろ高まる可能性があります。
つまり食品インフレは納豆にとって、
原材料費を押し上げる逆風
である一方、
安価なタンパク源としての魅力を高める追い風
にもなり得ます。
経済には、このように一つの出来事がプラスとマイナスの両方に作用することがあります。
投資家として納豆から学べる5つのこと
今回、納豆について調べてみると、投資家としてもいろいろなことが見えてきました。
為替
輸入原料を使う企業にとって円安はコスト増につながります。
インフレ
売上高が増えていても、原材料費がそれ以上に増えていれば利益は減少します。
価格決定力
値上げしても消費者が離れないブランドを持つ企業は強い。
サプライチェーン
完成品メーカーだけでなく、原材料・包装・物流・小売まで見ることで産業全体が見えてきます。
消費者としての実感
自分自身が、
「10円上がっても、この納豆を買う」
と思うのであれば、その理由を考えてみる。
そこにブランド力を理解するヒントがあります。
株価を見るだけが投資の勉強ではない
投資をしていると、
PER、PBR、ROE、配当利回り、チャート……
といった数字に目が行きます。
もちろん、これらは非常に重要です。
しかし、その前に、
「この会社はどうやって利益を出しているのか?」
を理解することも重要です。
今回の納豆の場合、代表企業が非上場なので「納豆株」を直接購入することはできません。
それでも、
円安 → 原材料高 → 企業コスト上昇 → 値上げ → 消費者行動 → 企業利益
という経済の流れを理解することができます。
これは上場企業を分析するときにも、そのまま役立つ考え方です。
まとめ|100円の納豆から日本経済が見えてくる
今回、身近な納豆を「経済」と「投資」という視点から考えてみました。
2025年の納豆市場は3,018億円と過去最高。
しかし、代表企業であるタカノフーズやミツカンは非上場です。
そのため今回は、
「どの納豆株を買えばいいのか?」
という記事にはなりませんでした。
しかし、むしろそこから面白いことが見えてきました。
一つ100円前後の納豆にも、
大豆価格
→ 為替
→ エネルギー
→ 人件費
→ 物流
→ 値上げ
→ 消費者
→ 企業利益
という経済の流れがあります。
ニュースで見る「円安」「インフレ」「人手不足」「価格転嫁」は、決して自分とは遠い世界の話ではありません。
スーパーの納豆売場にも、その影響は現れています。
投資というと、「次に上がる株を探すこと」と考えがちです。
しかし、
身近な商品の価格がなぜ上がったのかを考える。
その商品を誰が作り、誰が運び、誰が販売しているのかを調べる。
これも立派な投資の勉強だと思います。
次にスーパーへ行ったとき、いつもの納豆を見ながら、
「この100円の中に、どんな経済の流れが入っているのだろう?」
と考えてみると、普段とは少し違って見えるかもしれません。
※本記事は経済や企業について個人の視点から考えることを目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。


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