AI・半導体関連への巨額投資を背景に、世界の株式市場は高値圏で推移しています。
日本でもTOPIXは史上最高値を更新し、日経平均株価も高値圏にあります。
「ここまで株価が上がると、そろそろ危ないのでは?」
と感じる人も多いかもしれません。
しかし現在の株高には、企業業績の改善という一定の裏付けがあります。
一方で、日本経済新聞の記事「『適温』相場のリスクは金利上昇 AIが奪い合う資本の行く末は」では、今後の大きなリスクとしてAI投資による世界的な「資本の奪い合い」と、それに伴う金利上昇が指摘されています。
今回は、
- なぜ現在の株式市場が「適温相場」なのか
- 日本株上昇を支えているものは何か
- AI投資がなぜ金利上昇につながるのか
- 金利上昇が株価に与える影響
- なぜ日本株が「安全資産」として評価される可能性があるのか
について、投資初心者向けに考えてみます。
現在は「ゴルディロックス(適温)相場」
現在の米国経済には興味深い特徴があります。
個人消費にはやや減速感がある一方、AIやデータセンターを中心とした企業の設備投資は非常に旺盛です。
AI・データセンター関連を中心とする米企業の設備投資は、年率10%近い増加を続けています。
つまり、
個人消費の減速 → 景気の過熱を抑える
一方で、
AI設備投資の拡大 → 景気を下支えする
という状態です。
さらにインフレもピーク時から落ち着いています。
景気が強すぎてインフレが再加速するわけでもなく、景気後退に陥るほど弱くもない。
この「熱すぎず、冷たすぎず」という状態を、金融市場ではゴルディロックス(適温)相場と呼びます。
株式市場にとっては非常に居心地の良い環境です。
日本株上昇には「企業業績」という裏付けがある
日本株についても、単に期待だけで株価が上昇しているわけではありません。
日本経済新聞の集計によると、東証プライム上場企業の2027年3月期純利益は、
前期比14%増
となり、6年連続で過去最高を更新する見通しです。
特に興味深いのは、期初時点では増益率が約5%と予想されていたことです。
ところが、
- AI・半導体関連投資
- 円安
- 値上げの浸透
- 利益率改善
などによって企業業績が予想以上に伸びています。
第1四半期の段階ですでに全体の約2割の企業が通期純利益予想を上方修正しています。
売上高純利益率も7.2%まで上昇する見通しです。
つまり現在の日本株上昇は、
企業利益増加 → EPS上昇 → 株価上昇
という比較的健全な構造になっています。
株価は「EPS × PER」で考えると分かりやすい
ここで株価の基本的な考え方を確認しておきます。
株価 = EPS(1株当たり利益)× PER(株価収益率)
と考えると、現在の株式市場と今後のリスクが非常に分かりやすくなります。
企業業績が伸びればEPSが増加します。
例えば、
EPS 100円 × PER 15倍 = 株価1,500円
だった企業のEPSが120円になれば、
120円 × 15倍 = 1,800円
となります。
これが現在の日本株を支えている重要な要因です。
しかし問題はPERです。
最大のリスクは「金利上昇」

現在、世界の長期金利は上昇しています。
記事では、日本の長期金利が30年ぶりに2.9%台、米30年国債利回りも19年ぶりの高水準に達したことが指摘されています。
では、なぜ金利が上昇しているのでしょうか。
一つの重要な要因が、
AIによる「資本の奪い合い」
です。
AIには想像以上にお金が必要
AIというと、NVIDIAなどの半導体メーカーを思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし実際のAIインフラは半導体だけではありません。
(半導体業界についてはこちらのリンクから確認出来ます)
AI半導体
↓
データセンター
↓
電力設備
↓
発電所・送電網
↓
クラウドインフラ
と非常に広い産業にまたがっています。
そして、そのすべてに莫大な設備投資が必要です。
世界には「Money(お金)」があふれていても、不確実性を引き受けながら長期間投資する「Capital(資本)」には限りがあります。
AI企業が一斉に巨額投資を始めれば、この限られた資本を世界中の企業が奪い合うことになります。
NVIDIAは「半導体メーカー+投資ファンド」へ?
象徴的なのがNVIDIAです。
記事によると、NVIDIAは顧客20社に約8兆円を投じ、さらに大手金融6社と組んで約80兆円規模の外部ファンドを組成します。
AMD、Google、Broadcomなどでも、顧客への投資や債務保証の動きが広がっています。
これはAI企業が単純に半導体やクラウドサービスを販売するだけではなく、
自ら資金を供給してAI産業全体を拡大させる
段階に入っているとも考えられます。
AI投資が株価を下げる可能性もある
ここには一つの矛盾があります。
AI投資が増えれば、半導体企業などの利益が増加します。
これは株価にとってプラスです。
一方、
AI投資拡大
↓
資金需要増加
↓
社債発行・借入増加
↓
世界的な資本不足
↓
長期金利上昇
となる可能性があります。
金利が上昇すると、一般的に株式のPERには下落圧力がかかります。
先ほどの、
株価=EPS×PER
に戻って考えてみましょう。
例えばAI投資によってEPSが、
100円 → 120円
へ20%増えても、
金利上昇によってPERが、
20倍 → 15倍
へ低下すると、
100円 × 20倍 = 2,000円
だった株価が、
120円 × 15倍 = 1,800円
になります。
利益が増えているのに株価が下がる
ということも十分あり得るのです。
「AI投資は本当に回収できるのか」という問題
もう一つ重要なのが投資回収です。
データセンターやAI半導体、電力設備などに何十兆円、何百兆円という投資が行われています。
当然ながら、
「その巨額投資に見合う利益を本当に生み出せるのか?」
という問題が出てきます。
AI市場そのものが成長しても、設備投資額がそれ以上に膨らめば企業の収益性は低下します。
したがって今後は、
「AI市場が伸びるか?」
だけではなく、
「投資した資本に対してどれだけ利益を生み出せるのか?」
を見ることが重要になりそうです。
意外にも「日本株」が安全資産になる?
そしてこの記事で特に興味深いのが、日本株についての評価です。
これまで日本企業は、
「現金をため込んで投資しない」
と批判されることが少なくありませんでした。
しかしAI投資競争によって世界企業の借金が増え、金利が上昇する局面では状況が変わります。
日本企業には、
- 業績の上昇傾向
- 相対的に魅力の残る株式益利回り
- 豊富な手元資金
- 低いレバレッジ
- 高い自己資本比率
という特徴があります。
世界の企業が借金を増やしてAI投資競争に突入するほど、
「借金が少なく、現金を持っている企業」
の価値が相対的に高くなる可能性があります。
これまで弱点と思われていた日本企業の保守的な財務体質が、逆に強みになるわけです。
今後の投資で注目したいポイント
今回の記事を読んで、私が特に重要だと感じたのは、
「AIが成長するかどうか」だけを見ていてはいけない
ということです。
株価を、
株価=EPS×PER
として考えると非常に分かりやすくなります。
株価を押し上げる力
AI投資拡大
↓
企業業績拡大
↓
EPS上昇
↓
株価上昇
株価を押し下げる力
AI投資巨大化
↓
資本不足
↓
長期金利上昇
↓
PER低下
↓
株価下落圧力
今後の株式市場は、この2つの力の綱引きになる可能性があります。
まとめ|AIブームだからこそ「金利」を見る
現在の株式市場は、企業業績の拡大とインフレ鈍化を背景とした「適温相場」にあります。
特に日本企業は利益を伸ばしており、EPS上昇という株価上昇の裏付けがあります。
しかしAI投資が巨大化すればするほど、世界的な資本需要も増加します。
その結果、
AI投資拡大 → 資本の奪い合い → 長期金利上昇 → PER低下
という新しいリスクが生まれます。
そして興味深いことに、その環境では借金が少なく、現金を多く持つ日本企業が「安全資産」として再評価される可能性があります。
AI時代の投資では、
「AI関連企業の利益がどれだけ増えるのか」
だけでなく、
「AI投資によって世界の金利がどれだけ上がるのか」
にも注目していきたいと思います。
※本記事は特定の銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

コメント