「NTT」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
固定電話、フレッツ光、ドコモのスマートフォン。
私たちの生活に非常に身近な企業ですが、現在のNTTは単なる「電話会社」ではありません。
携帯電話やインターネットに加えて、企業向けIT、データセンター、海外ITサービス、AI、次世代通信基盤「IOWN」、さらには不動産やエネルギーまで手掛ける巨大企業グループです。
そして投資家としてNTTを見る場合、この「安定した通信事業」と「新しい成長事業」の組み合わせが非常に重要になります。
今回はNTTの公式IR資料をもとに、
- NTTは何で稼いでいるのか
- 私たち消費者との関係
- 今後どこで成長しようとしているのか
- 株主還元は魅力的なのか
- 現在の株価は買える水準なのか
という順番で、投資初心者にも分かりやすく考えてみます。
NTTは「電話会社」から巨大ICT企業へ

NTTのビジネスモデルを大きく分けると、現在は次の4事業です。
| 事業 | 2025年度営業収益 | 構成比 |
|---|---|---|
| 総合ICT事業 | 6兆4,581億円 | 39.3% |
| グローバル・ソリューション事業 | 5兆46億円 | 30.5% |
| 地域通信事業 | 3兆2,102億円 | 19.5% |
| その他 | 1兆7,526億円 | 10.7% |
※セグメント間取引を含む単純合算ベース。
つまり現在のNTTは、売上の約7割を「総合ICT」と「グローバル・ソリューション」が占めています。
昔ながらの固定電話会社というイメージだけでは、現在のNTTを正しく理解できなくなっています。
① 総合ICT事業|私たちに最も身近な稼ぎ頭
NTTの利益の中心となっているのが総合ICT事業です。
代表的なのがNTTドコモです。
スマートフォンの通信料金だけでなく、
- モバイル通信
- 光回線
- 金融・決済
- 法人向けICT
- スマートライフ関連サービス
など幅広い分野から収益を得ています。
2025年度の総合ICT事業の営業利益は9,421億円。
NTT全体のセグメント営業利益の54.3%を占めます。
消費者目線では?
私たちは毎月スマートフォン料金やインターネット料金を支払っています。
これを企業側から見ると「毎月比較的安定して入ってくる収入」になります。
景気が悪くなったからといって、
「今月はスマホを解約しよう」
とはなかなかなりません。
このため通信事業には、景気変動の影響を比較的受けにくいという特徴があります。
投資家目線では?
ここがNTTの大きな強みです。
通信料金という継続収入が巨大なキャッシュフローを生み、それを配当、自社株買い、設備投資、新規事業などへ振り向けることができます。
言い換えれば、
私たちが毎月支払っている通信料金が、NTTの安定した利益と株主還元の源泉の一つになっている
わけです。
② 地域通信事業|日本の通信インフラを支える
NTT東日本・NTT西日本などが中心となる事業です。
固定電話や光回線など、日本の通信インフラを支えています。
2025年度営業収益は3兆2,102億円、営業利益は3,074億円でした。
固定電話については長期的な縮小が避けられません。
一方、光回線や法人向けネットワーク、地域DXなどの需要があります。
爆発的な成長を期待する事業ではありませんが、日本社会に必要不可欠なインフラという点で、NTTの安定性を支える重要な存在です。
③ グローバル・ソリューション事業|実はNTTの成長を左右する重要分野
NTTを「国内通信会社」と考えていると見落としやすいのが、この事業です。
2025年度の営業収益は5兆46億円。
すでにNTT全体でも非常に大きな規模になっています。
企業のDX支援、システム開発、ITサービス、データセンターなどを世界規模で展開しています。
企業がAIやクラウドを導入すればするほど、
- データを保存する場所
- 高速ネットワーク
- セキュリティ
- システム構築
- データセンター
などが必要になります。
ここにはNTTの成長余地があります。
投資家として注目したいポイント
国内人口が減少していく日本だけに依存していては、大幅な成長には限界があります。
そのためNTTの将来を考える場合、
「国内通信会社」から「世界的なICTインフラ企業」へ変われるか
が非常に重要だと思います。
④ 不動産・エネルギーなども展開
NTTには通信・IT以外にも、不動産やエネルギーなどの事業があります。
2025年度の営業収益は1兆7,526億円。
NTTが保有してきた土地・建物などの資産や、全国に広がるインフラを活用できる点は、他のIT企業にはない強みです。
一方で、2025年度の同セグメント営業利益は▲16億円でした。
そのため現状では「利益の柱」というより、今後の事業展開を見ていく分野と考えています。
NTTのビジネスモデルを簡単にすると

NTTの強さは、次の循環にあります。
個人・企業から通信・IT料金を得る
↓
巨大な安定収入・キャッシュフローを生み出す
↓
通信網・データセンター・研究開発などへ投資
↓
AI・DX・IOWNなど新しいサービスを生み出す
↓
国内外の顧客を増やす
↓
利益の一部を配当・自社株買いで株主へ還元
この循環が続くかどうかが、長期投資家にとって重要になります。
「IOWN」はNTTの将来を変える可能性がある
NTTを長期投資対象として考えるなら、避けて通れないのが「IOWN」です。
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は、光技術を中心として高速・大容量・低遅延・低消費電力の通信・コンピューティング基盤を目指す構想です。
特にAI時代には大量のデータ処理が必要となり、データセンターの電力消費も大きな問題になります。
そこでNTTが持つ光技術が重要になる可能性があります。
投資家としては冷静に見たい
ただし、
「IOWNがすごい=すぐNTTの利益が急増する」
とは限りません。
技術的に優れていても、
- 普及まで何年かかるのか
- 設備投資はいくら必要なのか
- どれだけ利益につながるのか
- 海外でどこまで採用されるのか
を見る必要があります。
現在のNTT株を買うのであれば、IOWNを「現在の利益」ではなく将来の成長オプションとして評価する方がよいでしょう。
2026年度の業績予想
NTTの会社予想は次のようになっています。
| 2025年度実績 | 2026年度予想 | |
|---|---|---|
| 営業収益 | 14兆4,091億円 | 15兆600億円 |
| 営業利益 | 1兆7,062億円 | 1兆7,100億円 |
| 当期利益 | 1兆370億円 | 9,800億円 |
| EBITDA | 3兆4,233億円 | 3兆4,300億円 |
| EPS | 12.6円 | 12.1円 |
売上高は15兆円を突破する計画です。
一方、営業利益はほぼ横ばい、当期利益は減益予想です。
ここはNTTを見るうえで重要です。
「売上が伸びているから高成長企業」というわけではなく、
巨大な安定企業が次の成長ステージを模索している段階
と考える方が実態に近いと思います。
消費者から見たNTTの強み
NTTの強さを考えるとき、投資指標だけを見るより、自分自身の生活を考えると分かりやすくなります。
スマートフォン、光回線、企業ネットワーク、データセンター、クラウドなど、現代社会では通信インフラなしに生活することが難しくなっています。
さらにAIが普及すれば、データ通信量やデータ処理需要はむしろ増える可能性があります。
これはNTTにとって追い風です。
一方、消費者にとって通信料金は安い方がありがたい。
政府や競合企業による料金引き下げ圧力は、NTTにとって利益率低下につながる可能性があります。
つまり、
消費者には「通信料金を安くしてほしい」
投資家には「利益を伸ばしてほしい」
という相反する面もあります。
生活インフラ企業ならではの特徴です。
投資家から見たNTT最大の魅力は「安定+株主還元」
NTTを保有する理由として大きいのが株主還元です。
2026年度の年間配当予想は1株5.4円。
実現すれば16期連続増配となる予定です。
NTTは自社株買いも継続的に行っています。
したがってNTT株は、
株価が数倍になることだけを狙う成長株
というより、
安定した事業から生み出される利益を、配当や自社株買いとして受け取りながら長期保有する銘柄
として考える方がしっくりきます。
現在の株価168円前後をどう考える?

今回確認した株価は168.4円。
年間配当5.4円なら、
配当利回りは約3.2%
です。
さらに添付チャートを見ると、142.6円から170円近辺まで大きく上昇しています。
5日・25日・75日移動平均線も上向きで、株価は強い上昇トレンドです。
一方、RSIも高くなっており、短期的にはかなり買われています。
したがって私は、
「会社としては長期保有候補。しかし170円近辺を一気に追いかける必要はない」
と考えます。
私なら一括購入より分散購入
NTTのような銘柄では、買値を完璧に当てるより分散して買う方法が合っていると思います。
例えば、
168円前後:少額
160~165円:追加
150円台:さらに追加
というように価格帯を分けます。
もちろん150円台まで下がらず、そのまま上昇する可能性もあります。
しかしNTTは短期で大きな値幅を取りに行く銘柄というより、長期保有して配当を積み上げるタイプです。
焦って高値を追う必要性は比較的小さいと考えています。
NTT投資のメリット
NTTの強みをまとめると、
- 国内最大級の通信インフラ
- 景気変動に比較的強い
- 巨大なキャッシュフロー
- 16期連続増配予定
- 自社株買い
- グローバルICT事業
- AI・データセンター需要
- IOWNという将来の成長材料
などがあります。
「守り」だけでなく「攻め」の材料も持っていることがNTTの面白いところです。
NTT投資のリスク
もちろんNTTにもリスクがあります。
特に注意したいのは、
① 国内人口減少
国内の通信契約者が大幅に増え続ける環境ではありません。
② 通信料金の競争
楽天モバイルを含め競争が激しく、料金引き下げは利益を圧迫します。
③ 巨大企業ゆえの成長率
売上15兆円規模になると、利益を毎年20~30%伸ばすことは簡単ではありません。
④ 大規模な設備投資
通信・データセンター・IOWNには巨額の投資が必要です。
⑤ IOWNなど新事業の収益化
期待通りの収益につながるとは限りません。
⑥ 株価上昇後のバリュエーション
良い会社でも、高く買えば投資リターンは低下します。
NTTの場合も「企業の良さ」と「現在の株価が安いか」は分けて考える必要があります。
消費者として使い、株主として利益を受け取る
NTTを調べていて面白いと思うのは、私たちの日常生活と非常に近い企業であることです。
スマートフォンを使う。
インターネットを使う。
企業がクラウドを利用する。
AIが大量のデータを処理する。
その裏側では通信ネットワークやデータセンターが動いています。
消費者として通信サービスを利用する一方で、株主になれば、その巨大な通信・ICT経済圏から生まれる利益の一部を配当として受け取る側にもなれます。
これは長期投資を考えるうえで分かりやすいビジネスモデルです。
まとめ|NTTは「守りの通信株」から「通信+AIインフラ企業」へ
NTTというと、以前は「固定電話の会社」「安定した高配当株」という印象が強かったと思います。
しかし現在の事業構造を見ると、それだけではありません。
国内通信という強固な収益基盤を持ちながら、グローバルICT、データセンター、AI、IOWNなどへ投資しています。
私がNTTを見るうえで最も注目したいのは、
「現在の安定したキャッシュフローを、未来の成長事業へうまく転換できるか」
です。
これに成功すれば、NTTは単なる国内通信株ではなく、世界的なデジタルインフラ企業として再評価される可能性があります。
一方、現在の株価は170円近辺まで上昇しているため、投資するなら価格を追いかけるより、押し目を待ちながら分散して購入する方法が向いていると考えています。
NTTは、
「大きく儲ける銘柄」より「長く持ち続けたい銘柄」になれるか。
その視点で今後も業績、配当、IOWN・AI関連事業の成長を追っていきたいと思います。
※本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
【参考資料・公式情報】
NTT公式|IR資料室
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