株式市場には、国が大株主となっている上場企業があります。
代表的なのが、
- JT(日本たばこ産業)
- NTT(日本電信電話)
- 日本郵政
です。
いずれも私たちの生活になじみのある大企業ですが、一般的な上場企業と大きく違うのは、現在も政府が大株主であることです。
そして、この3社にはもう一つ共通点があります。
それが「株主還元」です。
JTは高配当株として有名ですし、NTTは長期にわたって増配を続けています。日本郵政も株主還元の強化を打ち出しています。
そこで今回は、
「政府保有株は高配当投資に向いているのか?」
という視点から考えてみます。
そもそも「政府保有株」とは?

政府保有株とは、その名の通り国が株式を保有している企業です。
ただし、
「国と関係が深い企業=政府保有株」
ではありません。
例えば三菱重工業やIHI、J-POWERなどは国の政策と非常に関係が深い企業ですが、JTやNTT、日本郵政とは立場が違います。
JT、NTT、日本郵政には法律に基づく政府保有の仕組みがあります。
一方、J-POWERは国策的な電力インフラ企業ではあるものの、現在は完全民営化されています。
つまり、
「政府が実際に株主である企業」
と
「政府の政策によって恩恵を受ける国策関連企業」
は分けて考えた方がよさそうです。
政府が実際に株式を保有する企業とは別に、国の政策によって需要拡大が期待される「国策関連株」もあります。防衛関連では三菱重工業・IHI・NECについて比較しています。
→ 三菱重工・IHI・NECは何が違う?防衛関連株を初心者向けにわかりやすく解説防衛関連株として注目される三菱重工、IHI、NECの違いを初心者向けに解説。ミサイル・艦艇、航空エンジン、レーダー・通信・AIなど3社の強みと、日本の防衛費拡大や今後の防衛産業について整理します。
JT・NTT・日本郵政の特徴
政府保有株といっても、それぞれ事業内容や株主還元方針はかなり違います。
JT(2914)
JTは旧日本専売公社を母体とする企業です。
現在も法律によって政府による一定割合の株式保有が定められています。
JTの大きな特徴は高い株主還元です。
2026年度の年間配当予想は1株272円。
会社は株主還元について「配当性向75%を目安」とする方針を掲げています。
つまり、利益のかなりの部分を株主に配当として還元する企業です。
高配当株を中心にポートフォリオを作る投資家にとって、JTが頻繁に候補になる理由がここにあります。
ただし注意したいのが、
「政府が株主だから高配当なのではない」
ということです。
JTの配当を支えているのは、たばこ事業を中心とした収益力です。
さらにJTは海外事業の割合が大きいため、為替、各国のたばこ規制、訴訟などの影響も受けます。
したがって、
「政府保有株だから安全」
ではなく、
「利益とキャッシュフローが配当を維持できるか」
を見ることが重要になります。
NTT(9432)
NTTも旧日本電信電話公社を母体とする企業です。
通信という日本社会に欠かせないインフラを担っています。
NTTの株主還元で注目したいのは「増配」です。
2026年度の年間配当は1株5.4円を予定しており、実現すれば16期連続増配となります。
JTのように「非常に高い配当」を狙うというより、
「長期間にわたって少しずつ配当を増やしていく」
タイプの銘柄と考えた方が分かりやすいでしょう。
通信事業は景気変動の影響を比較的受けにくい一方、NTTは現在、通信だけでなくIT、データセンター、AI、IOWNなどにも投資しています。
つまり、
「安定した通信事業+成長分野への投資+増配」
という特徴があります。
高配当投資でも、
「現在の配当利回り」
だけを見るのではなく、
「10年後に配当がどこまで増えているか」
という視点があります。
その意味ではNTTは、JTとは違ったタイプの配当株といえます。
日本郵政(6178)
日本郵政も政府が大株主となっている企業です。
2026年6月末時点で「政府および地方公共団体」の保有割合は35.50%となっています。
日本郵政の特徴は、
日本郵便
ゆうちょ銀行
かんぽ生命
などを傘下に持っていることです。
全国の郵便局ネットワークという非常に大きなインフラを持つ一方、郵便物の減少など構造的な課題もあります。
注目したいのが最近の株主還元方針です。
日本郵政は2026年度の1株配当を60円に増配し、この60円を起点とする「業績連動の累進配当」を導入するとしています。
さらに配当と自己株式取得を合わせて、累計総還元性向50%以上を目指す方針です。
つまり日本郵政も、以前より株主還元を意識した経営へと変化していることが分かります。
なぜ政府保有株と高配当投資は相性がよく見えるのか?
JT、NTT、日本郵政を見ると、いくつか共通点があります。
まず事業規模が非常に大きいこと。
そして、
通信
郵便
金融
たばこ
など、比較的成熟した事業を持っています。
成熟企業は急成長企業とは違い、稼いだ利益をすべて成長投資に回す必要性が低くなる場合があります。
その結果、
「利益を配当や自社株買いで株主に還元する」
という選択肢が大きくなります。
これは高配当投資との相性がよい部分です。
「国が株主=安心」と考えるのは危険
ここで注意したいことがあります。
政府が大株主だからといって、
「株価が下がらない」
「減配しない」
「倒産しない」
という保証があるわけではありません。
むしろ政府保有企業には、普通の民間企業とは違った事情があります。
政府にとって重要なのは株価だけではありません。
例えばNTTなら通信インフラ、日本郵政なら全国の郵便サービスなど、公共的な役割があります。
つまり、
「一般株主の利益最大化」
と
「国の政策目的」
が常に一致するとは限りません。
ここは政府保有株を見る際に忘れてはいけないポイントだと思います。
配当利回りだけで判断しない
高配当投資を始めると、どうしても「配当利回り○%」という数字に目が行きます。
しかし、本当に重要なのは、
「その配当を5年、10年と続けられるのか」
ということです。
例えばJTなら、
たばこ事業の利益
海外事業の成長
為替
規制や訴訟
配当性向
を見る必要があります。
NTTなら、
通信事業の利益
設備投資
データセンター・AIへの投資
フリーキャッシュフロー
増配余力
が重要です。
日本郵政なら、
郵便事業の収益性
ゆうちょ銀行・かんぽ生命の利益
金利環境
政府による株式売却
株主還元方針
などを見る必要があります。
単純に「国が株主だから買う」のではなく、
「配当の原資となる利益がどこから生まれているのか」
を見ることが重要だと思います。
高配当株だけでなく、金利が上昇する環境では国債や預金との比較も重要になります。株式と債券をどう組み合わせるかについては、こちらの記事で詳しく考えています。
→ 高金利時代の資産運用|株一辺倒で本当に大丈夫?国債も含めて考え直す時代へ高金利時代に入り、株式だけを見ていればよいのでしょうか。日経平均・TOPIX・ドル円を中心に見てきた私が、金利や国債利回り、債券価格にも注目するようになった理由を解説。変動10年国債や株・国債・現金の資産配分について考えます。
JT・NTT・日本郵政は同じ政府保有株でも性格が違う
3社を整理すると、かなり違いが見えてきます。
JTは、
「高い配当を現在受け取るタイプ」
NTTは、
「増配を長期間積み上げていくタイプ」
日本郵政は、
「株主還元強化の変化を見るタイプ」
と考えると分かりやすいでしょう。
同じ政府保有株でも、投資する理由はまったく同じではありません。
株式の配当だけでなく、定期的なインカムを得る方法としてJ-REITの分配金もあります。私自身が保有するJ-REITについて、分配金を含めたトータルリターンを計算してみました。
→ 【J-REIT第2弾】平均購入価格1,956円、現在1,806円。私のREIT投資は本当に損なのか?平均購入価格1,956円、2,500口を保有するJ-REITを実際に検証。現在価格1,806円で約37.5万円の含み損ですが、REITは価格だけで判断できません。分配金を含めたトータルリターンの考え方を、実際の保有状況をもとに紹介します。
高配当株も「業界全体」から見る
高配当株を選ぶときも、配当利回りだけを見るのではなく、その企業が業界の中でどのような位置にいるのかを確認することが大切です。
私自身も企業分析をするときは、個別企業だけでなく業界全体を見るようにしています。
JTならたばこ、NTTなら通信、日本郵政なら郵便・金融と、業界構造を理解することで「なぜ利益を出せるのか」も見えやすくなります。
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政府保有株は高配当投資に向いているのか?
政府保有株には、
大規模な事業基盤
社会インフラとの関係
成熟した事業
比較的積極的な株主還元
といった、高配当投資と相性のよい特徴を持つ企業があります。
一方、
「国が株主だから安心」
という理由だけで投資するのは注意が必要です。
重要なのは政府の存在ではなく、
利益
キャッシュフロー
配当性向
増配実績
成長投資
財務状況
を確認することです。
高配当かどうかだけではなく、業績やPER・PBRなどから企業を分析することも重要です。実際に保有株を他社と比較しながら再評価した記事はこちらです。
→ ホンダ株を平均1,441円で保有中。トヨタ・スズキと比較して見えてきた「強さ」の理由平均取得価格1,441円でホンダ株を保有中。トヨタ・スズキの株価チャートと比較するとホンダの強さが目立ちます。業績V字回復、年間70円配当、PBR0.5倍台、信用倍率などから、ホンダ株を改めて評価し今後の保有方針を考えます。
政府保有株というのは、それだけで投資先を決める材料ではなく、
「企業を見るための一つの切り口」
として考えるのがよさそうです。
JT、NTT、日本郵政。
同じ「国が大株主の企業」でも、それぞれの配当政策や事業構造を比較してみると、高配当株を見るときの考え方がかなり分かりやすくなります。
※本記事は特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。投資判断は企業の業績や財務状況などを確認したうえで、ご自身の判断で行ってください。






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