最近、日本郵船・商船三井・川崎汽船などの海運株が注目されています。
「海運会社って、船で荷物を運ぶ会社でしょう?」
以前の私は、そのくらいの認識しかありませんでした。
しかし投資を始めて企業や業界について調べるようになると、海運株は世界経済だけでなく、運賃・原油価格・為替・地政学リスクなど、さまざまな要因で業績が大きく動くことが分かってきました。
2026年9月29日の日本経済新聞でも、海運株の上昇基調について取り上げられています。
今回は、
「なぜ今、海運株が上昇しているのか?」
を投資初心者の目線から整理してみます。
海運株とは?

日本を代表する海運会社には、
- 日本郵船
- 商船三井
- 川崎汽船
の大手3社があります。
コンテナ船、自動車船、LNG船、ばら積み船などを使って、世界中でさまざまな物資を運んでいます。
日本は原油や天然ガス、鉄鉱石など多くの資源を海外から輸入しています。
そのため海運は、日本経済を支える重要な産業の一つです。
ただし海運会社の利益は、単純に「たくさん荷物を運べば増える」というものではありません。
大きなポイントになるのが海上運賃です。
海運株を見るなら「運賃」が重要
例えば、同じ船で同じ量の荷物を運んでも、
1回の輸送で100万円もらえる場合と、200万円もらえる場合では利益が大きく違います。
この輸送価格が海上運賃です。
船の需要が増えたり、利用できる船が不足したりすると、運賃は上昇しやすくなります。
すると、
運賃上昇
↓
海運会社の売上・利益改善
↓
業績上方修正への期待
↓
株価上昇
という流れが生まれることがあります。
現在の海運株を見るうえでも、この「運賃」が重要なキーワードになっています。
なぜ海上運賃が上がるのか?
ここで面白いのが、必ずしも世界の荷物が急増しなくても運賃が上がる場合があることです。
その理由の一つが航路の長距離化です。
例えば中東情勢などの地政学リスクが高まり、船が通常の航路を通れなくなるとします。
すると安全な航路へ迂回する必要があります。
航海距離が長くなれば、一隻の船が一回の輸送に使う日数も増えます。
つまり、
航路が混乱する
↓
船が長期間拘束される
↓
利用できる船が実質的に減る
↓
船不足になる
↓
運賃が上昇する
という現象が起こります。
ここが海運業界の面白いところです。
地政学リスク=海運株下落とは限らない
一般的に戦争や国際情勢の悪化は株式市場にとって悪材料と考えがちです。
しかし海運会社の場合は少し複雑です。
航路が不安定になること自体は当然リスクですが、一方で船の迂回によって輸送距離が伸びれば、船腹需給が引き締まり、海上運賃が上昇する可能性があります。
その結果、海運会社の収益にはプラスに働く場合があります。
つまり、
「地政学リスクが高まった=海運株には必ずマイナス」
とは限らないわけです。
投資を始めた頃の私なら、ここまで考えてニュースを読むことはありませんでした。
中東情勢と海運株の関係については、以前の記事でも「サウジ産原油の輸送費」という視点から詳しく調べています。ホルムズ海峡やタンカー運賃が海運会社にどのような影響を与えるのかについては、こちらの記事でまとめています。
サウジ産原油の輸送費10倍で海運株はどうなる?中東情勢と商船三井「帆のLNG船」から今後を考えるサウジ産原油の輸送費が約10倍に。中東情勢やホルムズ海峡・紅海の混乱は、日本郵船・商船三井・川崎汽船など海運株にどう影響するのか。海運3社を実際に保有する筆者が、タンカー運賃や商船三井の「帆を付けたLNG船」も含め、海運株の今後を考えます。
海運株は「市況株」
一方で注意したいのは、海運会社の利益がずっと安定して増えていくとは限らないことです。
海運株は典型的な市況関連株(シクリカル株)の一つです。
海上運賃が高い時期には大きな利益を上げることがありますが、船舶の供給が増えたり世界景気が減速したりして運賃が下がると、利益が急減する可能性もあります。
そのため、
「今の利益が大きいから割安」
という理由だけで判断するのは注意が必要だと思います。
現在のPERだけでなく、その利益が今後も続くのかを見ることが重要になります。
海運会社が「運賃」と一緒に見る必要があるように、資源関連企業では「資源価格」が業績を大きく左右します。最近注目されている銅についても、AI・データセンター需要との関係から整理しています。
「新たな石油」銅に世界のマネーが向かう理由|AI・データセンターで需要拡大、関連銘柄にも注目AI・データセンターの拡大で注目される銅。なぜ「新たな石油」と呼ばれるのか。電力網やEV、再生可能エネルギーとの関係、銅の供給制約、日本の関連企業まで投資家目線でわかりやすく解説します。
信用取引にも注意
今回の記事でもう一つ気になったのが、信用取引の動きです。
株価上昇が続くと、
「まだ上がるのでは?」
と考える投資家が増え、信用買いが積み上がることがあります。
逆に、
「さすがに上がりすぎでは?」
と考えて信用売りをする投資家も増えます。
信用売りが多いところで株価がさらに上昇すると、損失を避けるための買い戻しが入り、株価上昇が加速することがあります。
いわゆる踏み上げです。
反対に信用買いが大量に積み上がった状態で株価が下落すると、損切りによる売りが下落を加速させる場合があります。
海運株を見る場合、業績だけでなく信用残も確認しておきたいところです。
海運株を見るときにチェックしたい5項目
私自身が今後海運株を見るなら、次の5つを確認したいと思います。
① 海上運賃
② 世界景気・貿易量
③ 中東などの地政学リスク
④ 各社の業績予想・配当
⑤ 信用買い残・信用売り残
株価だけを追いかけるよりも、
「なぜ今、海運会社が儲かっているのか?」
を考えることが大切だと思います。
業界全体から企業を見てみる
個別企業を調べていると、その会社だけでなく「業界全体がどうなっているのか」を知ることが重要だと感じます。
私自身も企業分析をするときは、競合企業や業界の位置関係を確認するようにしています。
海運だけでなく、商社、半導体、電力、資源など、さまざまな業界の全体像をまとめて確認したい場合は、『会社四季報 業界地図 2027年版』も参考になります。
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ニュースが企業分析につながる
ブログを始めてから、新聞やニュースを見るときに、
「このニュースで影響を受ける企業はどこだろう?」
と考えることが増えました。
今回の海運株もその一例です。
中東情勢というニュースだけを見ると、株式投資とは直接関係がないように感じます。
しかし、
中東情勢
→ 航路変更
→ 輸送距離増加
→ 船不足
→ 海上運賃上昇
→ 海運会社の利益
→ 株価・配当
と考えていくと、世界のニュースと企業業績がつながってきます。
これが企業分析の面白いところだと感じています。
中東情勢の影響は海運業界だけではありません。物流網や資材価格が変化すれば、建設会社など他の業界にも影響が広がります。中東情勢とゼネコンの資材調達リスクについても別の記事で整理しています。
ゼネコン株は買いなのか?建設需要拡大の裏で高まる「資材調達リスク」中東情勢の悪化でゼネコンの資材調達リスクが高まっています。建設需要が好調な一方、物流混乱や資材不足、価格上昇が工期や利益率に与える影響と、代替資材・調達先分散・工程変更などゼネコン各社の対応策を解説します。
まとめ
海運株の上昇を考えるうえで重要なのは、単に「日本郵船や商船三井の株価が上がっている」という結果だけを見るのではなく、その背景を理解することです。
現在は海上運賃や地政学リスクなど複数の要因が絡み合っています。
一方、海運業界は市況によって利益が大きく変化する業界でもあります。
そのため私は、株価上昇だけを見て判断するのではなく、
「現在の高い運賃はいつまで続くのか?」
という視点を持って見ていきたいと思います。
投資を始めて約10年になりますが、まだまだ知らない業界ばかりです。
ニュースをきっかけに一つずつ業界の仕組みを調べていくことも、投資の勉強になると感じています。
参考資料・公式サイト
- 海運大手3社の事業内容や最新の決算・IR情報については、各社の公式サイトでも確認できます。
▶ 日本郵船 公式サイト
▶ 商船三井 公式サイト
▶ 川崎汽船 公式サイト - 信用買い残・信用売り残などのデータは、日本取引所グループ(JPX)の「銘柄別信用取引残高」でも確認できます。
▶ 日本取引所グループ「信用取引残高等」 - 日本経済新聞『海運株、上昇基調続く運賃や信用売り残、なお高水準 郵船「株式分割も検討」』





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