私はここ数年、日本郵船・商船三井・川崎汽船の海運大手3社の株を保有しています。
この間、海運株では大幅な株価上昇を経験するとともに、比較的高い配当も受け取ってきました。
実際に数年間保有して感じるのは、海運株は日本企業でありながら、世界情勢の変化を非常に強く受ける銘柄だということです。
世界中の海をコンテナ船や自動車船、LNG船、原油タンカーなどが航行しているため、世界景気や為替だけでなく、戦争や紛争、原油価格、さらには運河や海峡の航行状況まで業績や株価に影響します。
そのため私は海運株を保有するようになってから、中東情勢については常にチェックするようにしています。
今回、特に気になったニュースが2つありました。
一つは、サウジアラビア産原油の迂回輸送によって、輸送コストがホルムズ海峡の封鎖前と比較して約10倍に上昇しているというニュースです。
そしてもう一つが、商船三井が大型の「帆」を2基搭載したLNG運搬船を投入し、風の力によって燃料消費量を最大12%削減するというニュースです。
一見すると別々の話に見えます。
しかし海運株を保有する立場から見ると、
「地政学リスクによって航路が長くなる世界」
と、
「少ない燃料で効率よく航行できる船をつくる競争」
は、実は非常に深くつながっているのではないかと思います。
今後の中東情勢を含めた世界の動き、そして日本郵船・商船三井・川崎汽船など海運株がこれからどうなっていくのかは、私自身非常に興味のあるテーマです。
今回はこの2つのニュースをもとに、中東情勢の変化がなぜ海運株に追い風になることがあるのか、さらに海運会社の長期的な競争力を左右するものは何なのかを考えてみたいと思います。
サウジ産原油の輸送コストが約10倍に
今回の問題の出発点となっているのが、中東の重要航路であるホルムズ海峡です。
日本は原油の大部分を中東から輸入しており、ホルムズ海峡は日本のエネルギー供給を考えるうえでも非常に重要な場所です。
ホルムズ海峡の航行が難しくなると、通常のルートで原油を運ぶことができません。
そこでサウジアラビアは、東部の産油地帯から東西パイプラインを使って原油を紅海側へ送り、ヤンブー港からタンカーで輸出する迂回ルートを利用しています。
しかし、この方法にもコストがかかります。
原油の輸送コストには、
- タンカー運賃
- 船舶戦争保険料
- パイプライン使用料
- 迂回によって増加する燃料費
- 積み替えなどにかかる費用
などがあります。
これらを合わせたサウジ産原油の輸送コストが、封鎖前と比べて約10倍に膨らんでいると報じられています。
しかも紅海にも船舶攻撃などのリスクがあります。
つまり、「ホルムズ海峡を避ければ問題解決」という単純な状況ではないということです。
なぜ輸送コスト上昇が海運株には追い風になるのか

「輸送コストが10倍になるなら、海運会社にも悪材料なのでは?」
最初はそう思うかもしれません。
しかし、海運会社を見る場合には少し違った視点が必要です。
重要なのが船舶の需給と運賃です。
例えば、あるタンカーが通常の航路なら短期間で往復できていたとします。
ところが海峡を通れず、大幅な迂回を余儀なくされると、1回の航海に必要な日数が長くなります。
すると、
航路の混乱
↓
迂回によって航海距離が延びる
↓
1隻の船が長期間拘束される
↓
市場で利用できる船が減る
↓
タンカー不足になる
↓
運賃・用船料が上昇する
という現象が起こります。
海運会社にとって重要なのは、単に「何トン運んだか」だけではありません。
世界の船がどれだけ効率よく回転できているかも収益を左右します。
航路が長距離化すれば、世界に存在する船の数が変わらなくても、実質的な船舶供給量が減ることになります。
これが海運運賃を押し上げる要因になります。
「原油高=海運株安」とは限らない
もう一つ面白いのが、原油価格との関係です。
原油価格が上昇すれば船舶燃料の価格も上昇するため、海運会社にとってはコスト増になります。
ところが、
燃料費などのコスト上昇 < 海運運賃の上昇
となれば、海運会社の収益にはむしろプラスになる可能性があります。
そのため、
「原油高だから海運株には悪材料」
と単純に判断することはできません。
私自身、海運3社を保有しているため、中東情勢を見るときには原油価格だけを見るのではなく、その結果として航路や船舶需給、海上運賃がどう変化するのかまで見ることが重要だと考えています。
日本郵船・商船三井・川崎汽船への影響は?
日本を代表する海運大手が、日本郵船・商船三井・川崎汽船です。
| 企業 | 証券コード | 注目したいポイント |
|---|---|---|
| 日本郵船 | 9101 | 総合海運・エネルギー輸送 |
| 商船三井 | 9104 | LNG船・タンカーなどエネルギー輸送 |
| 川崎汽船 | 9107 | 自動車船・ドライバルク・エネルギー輸送など |
3社とも世界規模で事業を展開しているため、中東情勢や世界の海上輸送の変化は無視できません。
特に今回のテーマでは、原油タンカーやLNG船などエネルギー輸送が重要になります。
ただし、「輸送コスト10倍=海運会社の利益10倍」という意味ではありません。
戦争保険料や燃料費、安全対策費なども上昇するからです。
投資家として重要なのは、輸送コストという大きな数字だけを見るのではなく、VLCC(超大型原油タンカー)などの運賃がどこまで上昇し、その状態がどのくらい続くのかだと思います。
もう一つ気になった商船三井の「帆を付けたLNG船」
今回、中東情勢と同時に私が非常に興味を持ったのが、商船三井の新しいLNG運搬船です。
商船三井は2026年9月、韓国のハンファオーシャンで建造中のLNG船を公開しました。
この船の大きな特徴が、商船三井が開発した風力補助推進システム「ウインドチャレンジャー」を2基搭載していることです。
いわば、現代の巨大LNG船に「帆」を付けたようなものです。
ただし、昔の帆船とはまったく違います。
ウインドチャレンジャーは伸縮式の硬い翼のような帆を自動制御し、風の力を船の推進力として利用するシステムです。
商船三井によると、2026年9月に竣工予定の船は、風力補助推進システムを搭載する世界初のLNG船となります。
2基の帆を利用することで、航路などの条件によっては燃料消費量を最大12%削減できるとされています。
LNGをめぐる世界の動きは、海運会社だけでなく総合商社にも大きく関係しています。
資源・LNG事業に強みを持つ三菱商事については、業績や株価、今後の投資ポイントをこちらの記事で詳しく分析しています。
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なぜ今の時代に「帆」なのか?
最初にこのニュースを見たとき、
「最新鋭のLNG船に帆を付けるのか」
というところに非常に興味を持ちました。
しかし考えてみると、非常に合理的です。
風は航海中に利用できる自然エネルギーです。
風力を推進力の一部として利用できれば、
風力を利用
↓
エンジンの負担を軽減
↓
燃料消費量を削減
↓
燃料コストを削減
↓
CO2などの排出量も削減
という効果が期待できます。
海運会社にとっては、燃料費削減と脱炭素を同時に進められる可能性があります。
サウジ原油と「帆のLNG船」は実はつながっている
今回の2つの記事を読んで、私が最も興味深いと感じたのがここです。
中東情勢が悪化すると、
海峡を通れない
↓
航路を迂回する
↓
航海距離が長くなる
↓
燃料をたくさん使う
↓
輸送コストが上昇する
という問題が起きます。
その一方で商船三井は、
風を利用する
↓
燃料消費量を減らす
↓
長距離航海のコストを抑える
という技術を開発しています。
つまり、世界の地政学リスクによって船が遠回りする機会が増えるほど、少ない燃料で長距離を航行できる船の価値が高まる可能性があるのではないでしょうか。
私はここが、今回の2つのニュースを一緒に考えるうえで非常に重要だと思います。
燃料12%削減=利益12%増ではない
ただし、投資家として注意したい点もあります。
「燃料を12%削減できるなら、商船三井の利益も大幅に増える」
と単純に考えることはできません。
実際の燃料費を誰が負担するかは、船舶の契約形態などによって異なるためです。
それでも、省エネ性能の高い船を保有することには大きな意味があると私は考えています。
今後、世界的な環境規制が厳しくなれば、荷主側も、
「できるだけ燃料消費が少なく、CO2排出量の少ない船を使いたい」
と考える可能性があります。
そうなれば、省エネ性能の高い船を多く持つことが、海運会社の長期契約の獲得や競争力につながる可能性があります。
つまり、ウインドチャレンジャーの価値は単なる「燃料代節約」だけではないのではないでしょうか。
海運株は「短期」と「長期」を分けて見る
今回の2つの記事を組み合わせると、海運株を見るときには短期・中期・長期に分けると分かりやすいと思います。
短期
中東情勢、ホルムズ海峡、紅海、VLCC運賃など。
航路混乱によって船舶需給が逼迫すれば、海運運賃には上昇圧力がかかります。
中期
原油価格、燃料費、世界景気、船舶需給など。
運賃が高くても世界景気が悪化して輸送量そのものが減れば、海運会社にはマイナスとなる可能性があります。
長期
省エネ船、LNG船、次世代燃料、風力推進、脱炭素技術など。
ここでは「現在の運賃が高いか安いか」ではなく、10年後にどの会社が競争力のある船隊を持っているかという視点が重要になります。
海運株で今後チェックしたい7つのポイント
海運3社を保有する私自身、今後は次の項目を継続して確認していきたいと思います。
① ホルムズ海峡の航行状況
日本のエネルギー輸入にも直結する重要ポイントです。
② 紅海・バベルマンデブ海峡の状況
紅海ルートまで使いにくくなれば、さらに長距離の迂回が必要になります。
③ VLCCなどのタンカー運賃
中東情勢の変化が実際に海運会社の収益へつながるかを見る重要な指標です。
④ 原油・船舶燃料価格
運賃上昇だけでなく、コスト増も確認する必要があります。
⑤ 世界景気と荷動き
運賃が高くても輸送需要そのものが減れば、海運会社にはマイナスです。
⑥ 日本郵船・商船三井・川崎汽船の業績予想
市況変化が実際に会社の利益予想へ反映されているかを確認します。
⑦ 省エネ・脱炭素技術
今回のウインドチャレンジャーのような技術が、実際の燃費改善や長期契約の獲得につながるかにも注目したいと思います。
地政学リスクが高まるほど海運株に有利とは限らない
最後に注意したいのが、この点です。
海運会社にとって、
「航路が混乱する=必ず儲かる」
わけではありません。
大きく分けると、
| 世界情勢 | 海運会社への影響 |
|---|---|
| 航路が少し混乱 | 運賃上昇の可能性 |
| 長期間の迂回 | 船舶不足+運賃上昇の可能性 |
| 航行そのものが困難 | 運航停止・事故・保険負担などのリスク |
海運会社にとって収益面で追い風になりやすいのは、
「船は動かせる。しかし遠回りしなければならない」
という状態です。
完全に航行できなくなれば、話は変わってきます。
中東情勢については、「悪化すれば海運株が上がる」と単純化せず、実際の航行状況と運賃を確認することが大切だと思います。
中東情勢の悪化は、海運会社だけの問題ではありません。
航路の混乱や輸送コストの上昇は、海外から多くの資材を調達する建設業にも影響します。
中東情勢と物流混乱がゼネコンの資材調達に与える影響については、こちらの記事で詳しく整理しています。
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まとめ|世界情勢と技術革新の両方から海運3社を見ていきたい
私は日本郵船・商船三井・川崎汽船の3社をここ数年保有し、株価上昇と高い配当の恩恵を受けてきました。
その一方で、海運株を長く保有していると、世界情勢によって事業環境が大きく変化する業界であることも感じます。
今回のサウジ産原油の輸送コスト上昇は、その典型的な例ではないでしょうか。
中東情勢の悪化によって、
航路迂回
→ 航海日数増加
→ 船舶不足
→ 運賃上昇
となれば、海運会社には追い風になる可能性があります。
しかし同時に燃料費や保険料も上昇し、さらに情勢が悪化すれば航行そのものが難しくなるリスクもあります。
そして、もう一つ興味深いのが商船三井の「帆を付けたLNG船」です。
地政学リスクによって航路が長距離化する可能性がある世界で、少ない燃料で効率よく航行できる技術の価値は、今後さらに高まるのではないかと私は考えています。
海運株を見るときには、目先の運賃や配当利回りだけでなく、
世界情勢
× 海上運賃
× エネルギー価格
× 船舶需給
× 技術革新
という複数の視点から考える必要がありそうです。
海運3社を保有している私としても、今後の中東情勢を含めた世界の動きと、日本郵船・商船三井・川崎汽船がどのように対応していくのか、引き続き注目していきたいと思います。
※本記事は筆者自身の投資経験をもとにした情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
参考資料・公式サイト
・日本経済新聞「サウジ産原油 輸送費10倍」
・日本経済新聞「商船三井のLNG船・Wind Challenger関連記事」
・商船三井「LNG・エタン輸送事業」
・日本郵船「エネルギー事業」
・川崎汽船「VLCC3隻の建造契約」



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