生成AIの普及によって、NVIDIAなどの半導体企業が注目されています。
しかし、AI半導体が成長するためには、半導体そのものを設計・製造する企業だけではなく、製造工程で使われる材料を供給する企業も欠かせません。
その代表的な日本企業の一つが、東京応化工業(4186)です。
名前だけを見ると「化学メーカー」という印象ですが、実は半導体製造に欠かせないフォトレジスト(感光材)で世界トップクラスの企業です。
さらに最近では、AI向け半導体で重要性が高まっている3次元実装(先端パッケージ)向け材料も成長しています。
今回は「半導体企業分析シリーズ」の第1弾として、東京応化工業について初心者にも分かるように整理してみます。
半導体材料メーカーでは、東京応化工業以外にもさまざまな日本企業が高い技術力を持っています。
当ブログでは、半導体材料を手掛けるレゾナックについても企業分析しています。
→【関連記事】

東京応化工業とは?

東京応化工業は1936年に「東京応化研究所」として創業しました。
現在の主力事業は、半導体やディスプレイの製造工程で使われる材料です。
特に重要なのが、
フォトレジスト
です。
フォトレジストとは、半導体のシリコンウエハー上に非常に細かな回路を作るために使われる感光性材料です。
簡単に言えば、
「半導体の回路を描くために必要な材料」
と考えると分かりやすいでしょう。
東京応化工業によると、半導体用フォトレジスト全体では2024年見込みの出荷数量ベースで世界シェア24.7%とされています。
つまり、
半導体メーカーが最先端半導体を作る
↓
より細かな回路を作る必要がある
↓
高性能なフォトレジストが必要になる
という関係があります。
AI半導体市場が拡大すると、その裏側で半導体材料メーカーにも需要が波及するわけです。
半導体企業をもっと深く知りたい方へ
東京応化工業を調べていると、「フォトレジスト」「EUV」「前工程」「後工程」「3次元実装」など、専門用語がたくさん出てきます。
私自身も企業分析をする際、半導体の製造工程を理解しておくことの重要性を感じています。
半導体産業全体を体系的に理解したい方には、
『新・半導体産業のすべて AIを支える先端企業から日本メーカーの展望まで』
のような入門書も参考になります。
👉【Amazonで『新・半導体産業のすべて』を確認する】
※Amazonのアソシエイトとして、ミントブログは適格販売により収入を得ています。
なぜ生成AIが東京応化工業の追い風になるのか?
現在の半導体市場を大きく動かしているのが生成AIです。
AIデータセンターでは大量のGPUやHBM(広帯域メモリー)が必要になります。
しかも単純に半導体の数量が増えるだけではありません。
半導体の性能を高めるため、
微細化
→ 積層化
→ 3次元実装
という技術が重要になっています。
東京応化工業にとって興味深いのは、この複数の工程に材料を供給できることです。
AI市場の拡大は半導体だけに影響するわけではありません。データセンターの増設によって電力網や「銅」の需要も拡大しています。
【関連記事】

東京応化工業の強み① フォトレジスト
まず最大の強みがフォトレジストです。
半導体製造では世代によって、
g線・i線
↓
KrF
↓
ArF
↓
EUV
など異なる光源が利用されています。
特に最先端半導体ではEUV(極端紫外線)が重要になっています。
東京応化工業はEUVだけに集中しているわけではなく、ArF、KrF、g線・i線など幅広い製品を手掛けています。
これは企業分析上かなり重要です。
AI向け最先端半導体だけでなく、自動車・産業機器などで使われる成熟した半導体にも需要が存在するからです。
会社側も2026年について、半導体前工程用フォトレジストの売上高を前年比約10%増と想定していました。
強み② AI半導体の「3次元実装」
個人的に今後の東京応化工業を見るうえで特に注目したいのが、半導体後工程です。
AI半導体では、半導体を横方向に小さくする「微細化」だけではなく、チップを立体的に組み合わせる技術が重要になっています。
ここで登場するのが、
WHS(ウエハハンドリングシステム)材料
です。
半導体を3次元実装する際には、ウエハーを一時的に固定するための接着剤や、その後の洗浄などに特殊な材料が必要になります。
東京応化工業は2005年ごろからこの分野の開発を進めてきました。
当初は市場の立ち上がりが遅かったものの、生成AI向けGPUなどの普及によって3次元実装市場が急拡大。
東京応化工業は現在、WHS材料について2027年までに2024年比700%への拡大を見込んでいます。
20年近く研究してきた技術が、AI時代になって大きな成長分野になり始めたわけです。
強み③ 「前工程+後工程」の両方を狙える
ここが東京応化工業を理解するうえで面白いところです。
従来は、
フォトレジスト=半導体前工程
というイメージが強い会社でした。
ところが現在は、
前工程
→ EUV・ArF・KrFなどのフォトレジスト
後工程
→ パッケージ材料・WHS材料
という形で、半導体製造の複数工程に事業領域を広げています。
会社は2026年12月期当初計画で、半導体後工程関連材料について前年比30%増を見込んでいました。
生成AIによって半導体の高性能化が進めば、
「微細化」と「3次元化」
の両方が必要になります。
東京応化工業はその両方に材料を供給できることになります。
半導体の製造工程を詳しく知りたい方へ
リソグラフィー、エッチング、洗浄、成膜、パッケージングなど半導体の製造工程を扱っているため、「東京応化工業の材料がどこで使われているの?」という疑問の理解につながります。
👉【Amazonで『図解即戦力 半導体プロセスのしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』を確認する】
※Amazonのアソシエイトとして、ミントブログは適格販売により収入を得ています。
業績もAI需要を背景に拡大
実際に業績にも変化が表れています。
2026年12月期第2四半期累計では、
| 2026年12月期2Q累計 | |
|---|---|
| 売上高 | 約1,397億円 |
| 営業利益 | 約289億円 |
| 純利益 | 約204億円 |
となりました。
売上高は前年同期比約25%増、営業利益は約45%増です。
さらに会社は7月30日に2026年12月期の業績予想を上方修正しました。
| 2025年実績 | 2026年会社予想 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 約2,370億円 | 2,910億円 |
| 営業利益 | 約474億円 | 606億円 |
| 純利益 | 約333億円 | 426億円 |
出典:東京応化工業「2026年12月期 第2四半期決算資料」より筆者作成
売上高は約23%、営業利益・純利益は約28%の増加予想です。
背景には、データセンター向けAIサーバー需要の拡大があります。
研究開発効率にも注目
東京応化工業を分析していてもう一つ面白いのが、研究開発です。
半導体材料メーカーでは、新しい材料を開発して顧客の製造工程に採用されるまで長い時間がかかります。
そのため研究開発費だけを見るのではなく、
「研究開発からどれだけ利益を生み出せているか」
を見ることも重要です。
日経ヴェリタスでは、研究開発がどれだけ利益につながっているかを見る指標として、「直近5年間の営業利益 ÷ その前の5年間の研究開発費」を用いています。
この指標を見ると、東京応化工業は研究開発費に対して生み出す利益が以前より大きくなっており、研究開発の成果が収益につながっていることがうかがえます。
WHSがまさにその代表例でしょう。
2005年ごろから研究を続け、約20年後に生成AIという巨大市場が出現したことで、新たな成長事業として期待されるようになりました。
半導体材料では、
「現在売れている製品」だけでなく、「5年後、10年後に必要になる材料を持っているか」
という視点も重要だと感じます。
出典:日本経済新聞「日経ヴェリタス」
『東京応化工業の高瀬執行役員「AI需要拡大、半導体材料は後工程含め成長へ」』
今後の設備投資
需要拡大に対応するため、東京応化工業は生産能力も増強しています。
福島県郡山市ではフォトレジストの新製造棟を進め、韓国でも高純度化学薬品の生産能力増強を進めています。2025年12月期の決算資料でも、将来の半導体需要増加を見据えた国内外の戦略投資が説明されています。
設備投資だけでなく、M&Aや研究開発なども含め、将来の成長に向けた投資を続けています。
2026年にはEUV向けフォトレジストを開発する英国Irresistible Materialsとの戦略的投資・共同開発パートナーシップも進めています。
東京応化工業のリスクも見ておきたい
もちろんAI関連だからといって、成長が一直線に続くとは限りません。
特に注意したいのが、半導体市況の変動(シリコンサイクル)です。
半導体メーカーが設備投資を抑制すれば、フォトレジストなどの材料需要にも影響する可能性があります。
半導体サイクルについては下記関連記事にて詳しく解説しています。

また、
EUVなど先端材料での競争激化、顧客による採用品の変更、為替変動、AIデータセンター投資の減速、大規模設備投資による固定費増加
なども確認しておきたいポイントです。
さらに株価は業績だけでは動きません。
好業績がすでに株価に織り込まれている場合、決算が良くても市場予想を下回れば売られることがあります。
実際、2026年7月30日に会社が通期業績予想を上方修正した際も、営業利益予想が市場予想をやや下回ったことなどから株価は売られる場面がありました。
これは半導体株を見る際の重要なポイントです。
東京応化工業を見る「5つの数字」
今後決算が出るたびに、私は次の5点をチェックしていきたいと思います。
- EUV・ArFなど先端フォトレジストの売上成長率
- WHSなど半導体後工程材料の成長率
- 売上高営業利益率
- 設備投資・研究開発費
- AI・HBM関連需要について会社側の説明がどう変化しているか
単純な売上高だけではなく、「何が売上・利益を伸ばしているのか」を追っていくことが重要だと思います。
まとめ|東京応化工業は「AI半導体を作るための材料企業」
東京応化工業という社名だけを見ると、AIとの関係はなかなか分かりません。
しかし事業を掘り下げると、
AI → GPU・HBM需要増加 → 半導体の微細化・3次元化 → フォトレジスト・後工程材料需要増加
という流れが見えてきます。
特に興味深いのが、
フォトレジストという既存の強い事業に、WHSなど後工程材料という新しい成長ドライバーが加わってきたこと
です。
東京応化工業は2026年12月期に過去最高水準の業績を見込んでいます。
一方で、半導体関連株は期待が株価に先行しやすい分野でもあります。
「AI関連だから買う」ではなく、
どの工程で使われるのか
競争力はどこにあるのか
AI需要がどの程度業績に反映されているのか
その成長が現在の株価にどこまで織り込まれているのか
まで確認していくことが重要でしょう。
東京応化工業は、半導体産業を「材料側」から理解するうえでも非常に面白い企業だと思います。
※本記事は企業・業界研究を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
参考資料・公式サイト
東京応化工業 公式サイト
東京応化工業|会社概要
東京応化工業|IR情報
東京応化工業|統合レポート
東京応化工業|中期経営計画
東京応化工業|社長メッセージ


コメント