生成AIの急速な普及によって、半導体業界では新しい競争が始まっています。
第1弾では、AI半導体の性能競争が、
「回路を小さくする=微細化」
だけではなく、
「複数の半導体を高密度につなぐ=先端パッケージ」
へ広がっていることを紹介しました。
そもそも「先端パッケージとは何か?」「なぜAI半導体で重要なのか?」については、第1弾でGPU・HBM・TSMCのCoWoSとの関係から詳しく解説しています。
GPUとHBM(広帯域メモリー)などを一つの巨大な半導体システムとして動かすためには、高度なパッケージ技術が欠かせません。
では、この市場が拡大すると、どの日本企業が恩恵を受けるのでしょうか。
今回は、
イビデン
レゾナック
TOWA
ディスコ
東京エレクトロン
の5社を中心に、先端パッケージのサプライチェーンを投資初心者にも分かりやすく整理してみます。
※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
なぜ日本企業にチャンスがあるのか?

AI半導体の中心企業というと、
NVIDIA、TSMC、SK hynixなど海外企業が思い浮かびます。
しかし、AI半導体はこれらの企業だけでは作れません。
大まかに考えると、
半導体設計
↓
前工程
↓
GPU・HBM
↓
先端パッケージ
↓
パッケージ基板
↓
半導体材料
↓
加工・製造装置
↓
検査
という巨大なサプライチェーンがあります。
このうち、基板・材料・製造装置・精密加工は日本企業が強みを持つ分野です。
つまり、
「NVIDIAのGPUが売れる企業」を探すだけではなく、「AI半導体を作るために必要不可欠な企業」を探す
というのが今回のテーマです。
AI半導体はNVIDIAだけで完成するものではありません。設計から製造、材料、製造装置まで、世界中の企業がつながる巨大なサプライチェーンで成り立っています。
注目① イビデン|AI半導体を載せる「高機能基板」
最初に注目したいのがイビデン(4062)です。
イビデンの重要事業の一つがICパッケージ基板です。
簡単にいえば、
高性能な半導体と外部をつなぐ土台
のようなものです。
AIサーバー向け半導体が大型化・高性能化すれば、基板についても高密度化・大型化・高性能化が求められます。
ここでイビデンの技術が重要になります。
そして現在、かなり大きな投資が始まっています。
イビデンは2026年2月、2026~2028年度の3年間で電子事業へ約5,000億円を投資する計画を発表しました。
目的として明確に、
「AIサーバー及び高性能サーバー向け高機能ICパッケージ基板の生産能力増強」
を挙げています。河間事業場などへの約2,200億円の投資を第一段階として、2027年度から順次量産を開始する計画です。
これはAI半導体需要に対するかなり分かりやすい設備投資です。
イビデンの注目ポイント
強み
- 高機能ICパッケージ基板
- AI・高性能サーバー需要を直接取り込める
- 大規模な増産投資が進行
注意点
- 巨額設備投資による減価償却負担
- AI投資サイクルの影響
- 大口顧客の動向
先端パッケージ関連株を考えるなら、まず押さえておきたい「基板」の代表企業だと思います。
注目② レゾナック|「材料」でAI半導体を支える
次はレゾナック・ホールディングス(4004)です。
ミントブログでは以前から注目している企業ですが、先端パッケージという観点でも面白い存在です。
レゾナックは半導体の製造そのものではなく、半導体を作るために必要な材料に強みを持っています。
AI半導体では、
GPU
+
HBM
+
インターポーザー
+
基板
など異なる部品を組み合わせます。
そのため、
絶縁材料・接着材料・封止材料・研磨材料
など、さまざまな高性能材料が必要になります。
さらに注目したいのが、レゾナックが中心となって進めている「JOINT3」です。
これは次世代半導体パッケージ向けの材料・装置・設計ツールを共同開発するプロジェクトで、2026年5月時点では参加企業が28社に拡大しています。
興味深いのは参加企業です。
東京エレクトロン、TOWA、キヤノン、荏原製作所、東京応化工業、古河電工など、多くの企業が参加しています。
つまりレゾナックは単なる材料メーカーではなく、
日本の次世代半導体パッケージ技術をつなぐ中心企業の一つ
になろうとしている、と見ることもできます。
レゾナックの注目ポイント
強み
- 半導体材料に強い
- 先端パッケージ関連材料を幅広く展開
- JOINT3を通じた企業連携
注意点
- 半導体以外の事業も持つ
- 原材料価格や景気変動
- 次世代技術が収益へ本格寄与するまでの時間
個人的には、レゾナックを見る場合、単なる「半導体材料株」ではなく、先端パッケージ材料のプラットフォーム企業になれるかにも注目したいところです。
レゾナックについては、半導体材料への事業転換、業績、バリュエーション、株価の将来性まで個別記事で詳しく分析しています。
注目③ TOWA|半導体を「包む」装置
3社目がTOWA(6315)です。
TOWAは半導体製造の「後工程」に強い装置メーカーです。
代表的なのがモールディング装置。
これは半導体を樹脂で封止し、外部環境から保護する工程で使われます。
AI半導体のようにパッケージが複雑になるほど、
「きれいに、正確に、高密度に封止する」
技術も重要になります。
TOWAはJOINT3にも参加しており、次世代パッケージ開発にも関わっています。
TOWAの注目ポイント
強み
- 半導体モールディング装置
- 後工程に特化した技術力
- 先端パッケージ拡大の恩恵を受ける可能性
注意点
- 半導体設備投資の影響を受けやすい
- 中小型の半導体関連株なので株価変動が大きくなりやすい
- AI期待が株価へ先に織り込まれる可能性
イビデンが「基板」、レゾナックが「材料」なら、
TOWA=パッケージを作る装置
と覚えると分かりやすいでしょう。
注目④ ディスコ|「切る・削る」という日本の強み
4社目がディスコ(6146)です。
半導体はウエハー上に大量のチップを作った後、一つ一つに分離する必要があります。
そこで必要になるのが、
切る(ダイシング)
削る(グラインディング)
技術です。
「ただ切るだけ?」と思うかもしれません。
しかし最先端半導体ではチップが非常に薄くなり、加工精度も極めて高いレベルが要求されます。
特にHBMでは、複数のDRAMを積み重ねるため、ウエハーやチップを薄く加工する技術が重要になります。
先端パッケージが高度化するほど、精密加工の難易度も上がります。
ディスコの注目ポイント
強み
- 切断・研削という重要工程
- 高い精密加工技術
- HBM・先端パッケージ高度化との相性
注意点
- 半導体設備投資サイクル
- 成長期待を反映した株価評価になりやすい
- 高値で買うと業績が良くても株価調整を受ける可能性
ディスコは、
AI半導体そのものを作らなくても、半導体を作るために不可欠な「道具」を提供する企業
という典型的な存在です。
注目⑤ 東京エレクトロン|前工程から先端パッケージまで
最後は東京エレクトロン(8035)です。
東京エレクトロンというと「前工程の半導体製造装置メーカー」というイメージが強いと思います。
しかし現在は先端パッケージも成長分野になっています。
東京エレクトロンの2026年資料を見ると、先端パッケージ分野として、
Logic Packaging
HBM Packaging
Advanced Logic / Memory Test
を明確に成長領域として示しています。
さらにウエハーボンダー、レーザー関連装置、コーターデベロッパー、プローバーなど、複数工程へ事業領域を広げています。
2026年7月の決算説明では、先端パッケージ向けプローバーの年間売上高が1,000億円を大幅に超える見通しも示しています。
これは非常に興味深いポイントです。
東京エレクトロンは、
微細化が進む → 前工程装置で恩恵
だけでなく、
チップレット・HBMが増える → 先端パッケージでも恩恵
という構造を狙えるからです。
東京エレクトロンの注目ポイント
強み
- 世界有数の半導体製造装置メーカー
- 前工程だけでなく先端パッケージにも展開
- HBM・AI・先端ロジックなど複数テーマに関与
注意点
- 半導体設備投資全体の影響が大きい
- 中国向け規制など地政学リスク
- 株価のバリュエーション
5社を比較すると何が違う?
同じ「AI半導体関連株」でも、実際に利益を得る場所はまったく違います。
| 企業 | 主な分野 | AIパッケージとの関係 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| イビデン | 基板 | 高機能ICパッケージ基板 | AIサーバー需要との関係が分かりやすい |
| レゾナック | 材料 | 絶縁・接着・封止など | 材料+JOINT3 |
| TOWA | 製造装置 | モールディング | 後工程特化 |
| ディスコ | 精密加工 | 切断・研削・薄化 | HBM高度化にも注目 |
| 東京エレクトロン | 製造装置 | 接合・塗布・検査など | 前工程+後工程 |
この表を見ると、重要なことが分かります。
5社は競合というより、
基板 → 材料 → 加工 → パッケージ → 検査
という半導体サプライチェーンの異なる場所で利益を狙っている企業なのです。
では、投資初心者ならどこを見る?
ここからは「どの会社の株価が一番上がる」という話ではありません。
むしろ、
何を基準に企業を比較するか
が重要だと思います。
私なら次の4点を確認します。
- AI関連売上が実際に増えているか
- 設備投資・受注が増えているか
- 営業利益率が改善しているか
- 期待が株価に織り込まれ過ぎていないか
特に4番目は重要です。
「AI半導体市場が伸びる」
ことと、
「その企業の株を今買えば儲かる」
ことは同じではありません。
非常に優れた会社でも、株価が将来の成長を先取りして上昇していれば、決算が良くても株価が下落することがあります。
AI関連株への投資では企業の成長性だけでなく、金利やPERなど株価のバリュエーションを見ることも重要です。AIブームと金利、日本株の関係についてはこちらの記事で整理しています。
投資テーマ別に5社を整理すると?
今回の5社をあえて投資テーマ別に分けるなら、次のように考えると分かりやすいでしょう。
① AI需要をストレートに狙う
→ イビデン
AI・高性能サーバー向けパッケージ基板への5,000億円規模の投資計画は分かりやすい材料です。
② 日本の材料技術に注目する
→ レゾナック
材料だけでなく、JOINT3を通じて次世代パッケージのエコシステム形成に関わっている点に注目です。
③ 半導体投資全体の拡大を狙う
→ 東京エレクトロン
前工程からHBM・先端パッケージ・テストまで幅広く関われるのが特徴です。東京エレクトロン自身も、AI時代には複数機能を一つのパッケージに統合する先端パッケージが技術革新をけん引すると説明しています。
一方、TOWAやディスコは、特定工程で高い技術力を持つ「ツルハシ型」企業として見ると面白い存在です。
「NVIDIAの次」を探すならサプライチェーンを見る
AI投資ではどうしてもNVIDIAなど有名企業へ目が向きます。
しかし半導体産業を調べていくと、
GPUメーカーだけではAI半導体を作れない
ことが分かります。
NVIDIAが高性能GPUを設計する。
↓
TSMCなどが製造する。
↓
HBMを組み合わせる。
↓
高性能基板に載せる。
↓
材料で接続・絶縁・封止する。
↓
切断・研削する。
↓
パッケージ化する。
↓
検査する。
この巨大な産業の中には、さまざまな日本企業が存在します。
ゴールドラッシュで「金を掘る人」だけではなく「ツルハシを売る人」が利益を得たように、
AI時代のツルハシ企業を探す。
これが半導体投資の面白さの一つではないでしょうか。
まとめ|AI半導体の「裏側」に日本企業の強みがある
第1弾では、
「半導体競争は微細化から先端パッケージへ広がっている」
という話をしました。
そして今回、日本企業まで調べてみると、
イビデン=基板
レゾナック=材料
TOWA=モールディング
ディスコ=切断・研削
東京エレクトロン=製造・接合・検査装置
と、それぞれ異なる場所に強みがあることが分かります。
半導体パッケージングが「単なる後工程」ではなく、AI半導体の性能そのものを左右する技術になれば、こうした企業の重要性も高まる可能性があります。
実際、東京エレクトロンが引用するTechInsightsの予測では、2024~2030年の市場成長率は前工程のWFEが年平均8.3%なのに対し、**Test/Assemblyは10.1%**とされています。
ただし、
成長産業=必ず株価が上昇する
わけではありません。
次に重要になるのは、
「どの会社が最も利益を伸ばせそうなのか」
「現在の株価は割高なのか割安なのか」
という投資判断です。
AI半導体の主戦場が「作る」だけでなく「つなぐ」へ広がる中、日本企業がどこまで存在感を高められるのか。
今後も注目していきたいテーマです。
【参考資料・公式サイト】
■ イビデン
高機能ICパッケージ基板向け設備投資計画
■ レゾナック
次世代半導体パッケージ共同開発「JOINT3」
■ TOWA
次世代HBM4パッケージング技術
■ TOWA
2026年3月期 決算説明資料
■ ディスコ
半導体・HBM向け精密加工技術資料
■ 東京エレクトロン
Strategic Technologies for Future Growth
■ TSMC
CoWoS(先端パッケージ技術)






コメント