大成建設(1801)が、建築事業の収益力を大きく高めようとしています。
注目したいのが、既存建物の改修・リニューアル工事です。
大型の新築工事を次々と受注して売上高を伸ばすだけではなく、比較的工期が短く、採算性の高いリニューアル工事を積み上げることで、安定して利益を稼げる体質への転換を進めています。
大成建設は建築事業の利益率について15%、さらにその先には17%という高い水準を視野に入れています。
今回は、大成建設がなぜ改修工事を強化しているのか、業績や今後の成長性、そして現在の株価チャートも含めて考えてみます。
大成建設が「改修工事」を収益の柱へ

大成建設が力を入れているのが、オフィスや商業施設など既存建物のリニューアルです。
新築工事と比較すると、リニューアル工事には次のような特徴があります。
・比較的工期が短い
・採算性を確保しやすい
・既存顧客から継続受注を期待できる
・大型新築案件への依存度を下げられる
・建物の老朽化による安定した改修需要が期待できる
大成建設は以前からリニューアルを強みの一つとして位置付けており、今後は専門部署の人員を増やすなど、さらに経営資源を投入する方針です。
単純に「たくさん工事を受注する」のではなく、「利益をしっかり確保できる工事を増やす」という戦略が鮮明になっています。
なぜ今、改修工事なのか
背景には建設業界を取り巻く環境の変化があります。
建設業界では、
・資材価格の上昇
・人件費の上昇
・建設技能者の不足
・工期の長期化
・大型工事の採算悪化リスク
といった問題があります。
大型工事は受注額こそ大きいものの、完成まで数年かかることも珍しくありません。
その間に資材価格や人件費が上昇すると、受注時に想定していた利益が大きく減少する可能性があります。
実際、大手ゼネコンでも過去には大型案件の採算悪化によって利益が大幅に減少するケースがありました。
これに対して比較的工期の短いリニューアル工事であれば、物価変動によるリスクを抑えやすくなります。
つまり大成建設にとってリニューアル事業の拡大は、「売上高を増やすため」だけではなく、「利益率を安定させるため」の戦略でもあるわけです。
建築利益率「17%」を視野に
今回の記事で特に注目したいのが利益率です。
大成建設は建築事業について、まず15%程度の利益率を目指し、さらに17%という水準も視野に入れています。
17%という数字が実現すれば、ゼネコンの建築事業として非常に高い収益力になります。
ポイントは、
「売上高をどこまで増やせるか」
ではなく、
「受注した工事からどれだけ利益を残せるか」
へ経営の重点が移っていることです。
大成建設が目指しているのは、
大型新築工事中心
↓
資材高・人件費上昇による採算悪化リスク
↓
採算を重視した受注へ
↓
高収益のリニューアル工事を拡大
↓
利益率上昇
↓
安定して利益を稼げる企業へ
という収益構造の転換だと考えられます。
すでに業績改善は数字に表れている
大成建設の2026年3月期連結決算を見ると、収益改善はすでにかなり進んでいます。
売上高は2兆890億円で前期比3.0%減でした。
一方で、
・営業利益:1,879億円(前期比56.4%増)
・経常利益:1,957億円(同45.6%増)
・純利益:1,700億円(同37.3%増)
となり、各利益は大きく伸びました。
営業利益率も前期の5.6%から9.0%へ上昇しています。
つまり、
「売上高は減ったのに利益は大幅に増えた」
ということです。
これは現在の大成建設を見るうえで非常に重要なポイントです。
建築・土木事業の利益率改善が業績を押し上げており、これまで進めてきた採算重視の経営が数字として表れ始めています。
建築事業の利益改善が特に大きい
特に変化が大きいのが建築事業です。
2026年3月期の建築事業は、売上高が前期比9.0%減の約1兆2,744億円だった一方、営業利益は約783億円まで増加しました。
営業利益は前期比で約590%増という大幅な改善です。
不採算工事の減少などによって利益率が改善したことが大きく寄与しています。
今後、ここに高採算のリニューアル工事拡大が加われば、さらに収益力を高められる可能性があります。
株価は高値から大きく調整
一方、添付した株価チャートを見ると、業績とは少し違った動きが見られます。

現在の株価は12,570円。
一時は20,680円まで上昇していましたが、その後は下落基調となり、現在は高値から約4割低い水準まで調整しています。
チャート上では、
・5日移動平均線
・25日移動平均線
・75日移動平均線
の下側または近辺で株価が推移しており、中期的にはまだ明確な上昇トレンドに転換したとは言いにくい状態です。
特に75日移動平均線が株価より上に位置しているため、テクニカル面では戻り売りが出やすい局面と考えられます。
大成建設の最新株価やPER・PBR、配当利回り、目標株価などは「みんかぶ」でも確認できます。
→ みんかぶで大成建設(1801)の最新株価・指標を確認する
RSIは過熱感の少ない水準
RSI(14日)は、おおむね40台で推移しています。
一般的には、
・70以上 → 買われすぎ
・30以下 → 売られすぎ
の目安として使われます。
現在はどちらにも該当せず、極端な過熱感はありません。
株価はかなり下落しましたが、「明確な売られすぎ」という水準でもないため、RSIだけを見て反発を判断する局面ではなさそうです。
注意したいのが信用倍率
チャートで気になるのが信用倍率です。
信用倍率は直近で10倍前後と高い状態が続いています。
信用倍率が高いということは、信用買い残が信用売り残よりかなり多いことを意味します。
株価が上昇すれば問題ありませんが、株価が低迷すると信用買いをしている投資家の損切りが出やすくなります。
そのため、
「業績は良いのに株価がなかなか上昇しない」
という状況を作る要因になる場合があります。
現在の大成建設を見る場合、業績だけでなく信用需給にも注意しておきたいところです。
信用倍率は、株価の需給を考えるうえで重要な指標のひとつです。
「信用倍率が高いとなぜ株価の重荷になるの?」という方は、こちらの記事で仕組みを詳しく解説しています。
→ 信用倍率とは?株価への影響と見方をわかりやすく解説
今後の注目ポイント
今後、大成建設を見るうえでは次の点に注目したいと思います。
・リニューアル工事の受注拡大
・建築事業の利益率改善が続くか
・目標とする利益率15%、さらに17%へ近づけるか
・資材価格や人件費上昇を価格転嫁できるか
・不採算工事が再び増えないか
・大型工事の進捗
・信用買い残の整理が進むか
・75日移動平均線を上抜けられるか
特に重要なのは「利益率」です。
売上高だけを見るのではなく、建築事業の利益率が今後どこまで上昇するのかを確認していきたいところです。
大成建設の投資判断をどう考える?
現在の大成建設には、ファンダメンタルズとテクニカルで少し温度差があります。
ファンダメンタルズを見ると、
「利益率改善+過去最高益+リニューアル事業強化」
というポジティブな材料があります。
一方、株価を見ると、
「高値20,680円から12,570円まで大幅調整+75日移動平均線の下+高い信用倍率」
という慎重に見たい材料もあります。
したがって、現時点では「業績が良いからすぐ買う」というより、
業績改善
+
株価の下げ止まり
+
信用需給の改善
の3点を確認しながら判断するのが一つの考え方でしょう。
株価が現在の12,000円台で底固めできるのか、それとももう一段調整するのかは重要なポイントです。
逆に、株価が25日・75日移動平均線を明確に上回るようになれば、テクニカル面でも状況が変わってきます。
まとめ
大成建設は、従来の大型新築工事中心のゼネコンから、高採算のリニューアル工事を組み合わせた「利益重視型」の企業へ変わろうとしています。
2026年3月期には売上高が減少したにもかかわらず、営業利益が56.4%増加しました。
これは大成建設の収益構造が改善していることを示す重要な変化です。
今後さらにリニューアル工事を拡大し、建築事業の利益率を15%、そして17%まで高めることができれば、中長期的な企業価値向上につながる可能性があります。
一方、株価は20,680円の高値から12,000円台まで大幅に調整しており、信用倍率も高い状態です。
「会社の業績改善」と「株価の弱さ」が同時に存在しているのが現在の大成建設です。
投資家としては、
「利益率改善が本物なのか」
「リニューアル事業が安定収益源になるのか」
「株価の下落トレンドが終了するのか」
この3点を確認していくことが重要になりそうです。
※本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
【参考情報】
【公式サイト】
https://www.taisei.co.jp/
【大成建設 中長期事業戦略】
https://www.taisei.co.jp/sustainability/library/online/2025/pdf/05_chapter3_taisei_tougou25_a3.pdf
【大成建設グループ 中期経営計画】
https://www.taisei.co.jp/MungoBlobs/606/928/chuki07032301.pdf
【みんかぶ|大成建設(1801)株価チャート】
https://minkabu.jp/stock/1801



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