本田技研工業(ホンダ・7267)の業績に、市場の注目が集まっています。
日本経済新聞が2026年8月29日に掲載した「今期純利益の市場予想」ランキングでは、ホンダの純利益について会社予想を約4割上回る可能性が示されました。
会社側が予想する2027年3月期の純利益は4,000億円。
これに対して市場では、会社予想を約1,658億円上回る5,600億円台が期待されています。
一方、ホンダは2026年3月期にEV戦略見直しに伴う巨額損失を計上したばかりです。
「業績回復は本物なのか?」
「株価にはすでに織り込まれているのか?」
「PER・PBR・配当利回りを見ると割安なのか?」
今回はホンダのビジネスモデルから最新決算、株価チャート、バリュエーション、アナリスト予想まで確認し、現在のホンダ株を考えてみます。
ホンダは「自動車だけの会社」ではない

ホンダというと「自動車メーカー」というイメージが強いですが、投資先として分析する場合は少し違った見方が必要です。
ホンダの事業は大きく、
- 四輪事業
- 二輪事業
- 金融サービス事業
- パワープロダクツ・その他
に分けられます。
2026年3月期のセグメント売上収益を見ると、四輪事業が約14.17兆円、二輪事業が約4.02兆円、金融サービスが約3.53兆円となっています。
つまり売上規模では圧倒的に自動車が大きい会社です。
しかし、利益を見ると全く違う景色になります。
ホンダの強みは二輪事業
2026年3月期のセグメント営業利益は、
| 事業 | 営業利益 |
|---|---|
| 二輪 | 約7,319億円 |
| 四輪 | ▲約1兆4,111億円 |
| 金融サービス | 約2,755億円 |
| パワープロダクツ等 | ▲約107億円 |
となりました。
四輪事業が巨額赤字になった一方、二輪事業だけで7,000億円を超える利益を稼いでいます。
これが現在のホンダを見るうえで非常に重要です。
ホンダは世界最大級の二輪メーカーで、特にインドやブラジルなど新興国に強い販売基盤を持っています。2026年3月期には二輪事業が販売台数・営業利益とも過去最高を記録しました。
さらに金融サービスも安定した利益を生み出しています。
したがって現在のホンダは、
「二輪+金融で稼ぎながら、四輪事業を立て直している会社」
と考えると分かりやすいでしょう。
2026年3月期は約4,239億円の最終赤字
直近の通期決算だけを見ると、ホンダの業績は決して良くありません。
2026年3月期は、
売上収益:約21.80兆円
に対して、
営業損失:約4,143億円
親会社株主に帰属する損失:約4,239億円
となりました。
最大の原因がEV戦略の見直しです。
ホンダはEV市場の成長鈍化などを受け、北米で予定していたEV3車種の開発・発売を中止するなど電動化戦略を大幅に修正しました。
その結果、2026年3月期にはEV関連で約1.45兆円もの損失を計上しています。
ただし、ここで重要なのは、
「本業そのものが4,000億円以上赤字だったわけではない」
ということです。
EV戦略変更による巨額の一過性損失が業績を大きく押し下げています。
2027年3月期第1四半期で急回復
ところが2027年3月期に入ると状況が大きく変わりました。
4~6月期の純利益は、
約4,509億円
となっています。Honda公式の業績ハイライトでも、前年同期の約1,967億円から大幅に増加していることが確認できます。
営業利益についても約5,308億円となり、前年同期の約2,442億円から2倍以上へ増加しました。
市場予想約3,021億円も大幅に上回っています。
非常に印象的なのが、
第1四半期だけで純利益4,509億円
に対して、
会社の通期純利益予想が4,000億円
という点です。
もちろん第1四半期の利益をそのまま4倍できるわけではありません。
今後EV関連の追加費用などが発生する予定だからです。
それでも、市場が会社予想を「保守的」と見ている大きな理由になっています。
ホンダが業績予想を上方修正
好調な第1四半期を受け、ホンダは2027年3月期の業績予想を上方修正しました。
営業利益予想は、
5,000億円 → 6,500億円
へ30%引き上げられました。
純利益についても4,000億円へ上方修正されています。
背景の一つが為替です。
ホンダは為替前提を、
1ドル=145円 → 155円
へ変更しました。
海外売上比率の高いホンダにとって、円安は円換算した利益を押し上げます。
さらに北米では燃料価格上昇を背景に、燃費性能の高いハイブリッド車への需要も強まっています。
市場はさらに「4割上振れ」を予想

ここからが今回の新聞記事の重要ポイントです。
会社側の純利益予想は、
4,000億円
ですが、日本経済新聞の記事に掲載された市場予想との差額は、
+1,658億円
となっています。
つまり市場が期待する純利益は概算で、
約5,658億円
です。
会社予想に対する上振れ率は、
約41%
となります。
市場はすでに、
「ホンダはもう一度上方修正するのではないか」
と考え始めているわけです。
ただし、これは逆に考えると注意点にもなります。
株価は「会社予想」ではなく、ある程度「市場予想」を織り込んで動きます。
したがって今後は、
4,000億円を超えれば良い
のではなく、
市場が期待する5,600億円前後を超えられるか
が株価上昇のポイントになります。
ホンダ株のバリュエーションは?

2026年8月28日の終値は、
1,702.5円
でした。
この株価を基準にした主な指標は、
| 指標 | 水準 |
|---|---|
| 株価 | 1,702.5円 |
| 予想PER | 約16倍 |
| PBR | 約0.5~0.6倍 |
| 予想配当 | 70円 |
| 配当利回り | 約4.1% |
| 年初来高値 | 1,762.5円 |
| 年初来安値 | 1,238円 |
となっています。データ提供元によってPBRには多少差がありますが、おおむね0.5倍台です。
PBR0.5倍台はかなり低い
特に目立つのがPBRです。
PBR1倍は、
「株価=1株あたり純資産」
という水準です。
ホンダはその半分程度の評価しかされていません。
これは単純に「割安」と見ることもできますが、
四輪事業の低収益性
EV戦略の失敗
中国市場での競争力低下
経営改革への不透明感
などが株価に織り込まれているとも考えられます。
したがって、
PBR0.5倍だから無条件に割安
とは判断しない方がよいでしょう。
配当利回り4%超は魅力
一方、配当面はホンダ株の大きな魅力です。
2027年3月期の年間配当予想は、
1株70円
です。
株価1,700円前後なら、
配当利回り約4.1%
になります。
さらにホンダは2026年5月、今後3年間で少なくとも8,000億円規模の株主還元を行う方針を示しています。
EV関連損失で赤字になっても配当を維持している背景には、二輪事業と金融サービスの強いキャッシュ創出力があります。
「成長株」というより、
高配当+業績回復+低PBR
という視点で見る方が現在のホンダ株には合っているかもしれません。
株価チャートを見ると「回復期待」はかなり織り込まれた

チャートも重要です。
2026年の年初来安値は5月11日の、
1,238円
でした。
そこから株価は大きく回復し、8月21日には、
1,762.5円
まで上昇しています。
安値から高値までの上昇率を計算すると、
約42%上昇
です。
したがって、
「業績が回復しそうだから今から買えばいい」
と単純には考えにくくなっています。
市場はすでにかなりの業績回復を株価へ織り込んでいる可能性があります。
1,760円前後が当面の重要ライン
チャート上では年初来高値の1,762.5円を明確に突破できるかが一つの注目点でしょう。
ここを超えてくれば上昇トレンド継続が意識されやすくなります。
反対に高値を更新できず調整する場合は、
1,600円前後
などで下値を固められるかを確認したいところです。
アナリストの目標株価は意外に強気ではない
業績上振れ期待が高まっている一方で、アナリストの平均目標株価を見ると少し違った印象になります。
直近データでは12カ月目標株価の平均は、
約1,727円
です。
株価1,700円前後に対する上昇余地は、わずか数%程度です。
ただし証券会社ごとの差はかなり大きくなっています。
| 証券会社 | 目標株価 |
|---|---|
| シティ | 2,200円 |
| SMBC日興 | 2,100円 |
| 野村 | 2,000円 |
| ゴールドマン・サックス | 2,000円 |
| 岩井コスモ | 1,950円 |
| BofA | 1,900円 |
| JPMorgan | 1,600円 |
| マッコーリー | 1,600円 |
※目標株価・アナリスト予想は2026年8月時点。最新情報はみんかぶ等でご確認ください。
直近では目標株価を引き上げる動きが相次いでいます。
つまり、
強気派:「2,000~2,200円程度まで上昇余地あり」
慎重派:「1,600円程度が妥当」
と評価が大きく分かれています。
この差こそ、現在のホンダ株の難しさを表していると言えるでしょう。
ホンダの最新のアナリスト評価や目標株価については、みんかぶでも確認できます。目標株価は随時更新されるため、最新の市場評価を確認したい方は参考にしてみてください。
みんかぶ「ホンダ(7267)の株価・アナリスト予想」
ホンダ株の強材料
今後の株価を押し上げる可能性がある材料としては、まず2027年3月期業績の再上方修正が挙げられます。
市場予想の5,600億円台に近づけば、会社計画4,000億円からさらに大幅な上方修正となります。
次に二輪事業です。
インドやブラジルなど新興国市場が成長すれば、ホンダの強力なキャッシュ創出源になります。
そしてハイブリッド車。
EV一本足打法から戦略を修正し、2030年までに新たなハイブリッドモデルを投入する方針を示しています。
さらに円安が続けば海外利益の円換算額を押し上げます。
PBR0.5倍台という低い株価評価も、四輪事業が正常化すれば見直される可能性があります。
一方でリスクも大きい
最大の問題は四輪事業です。
EV戦略見直しによる一過性損失を除いて考えても、中国市場ではBYDなど中国メーカーとの競争が激化しています。
実際、2027年3月期第1四半期の世界販売は前年同期比4%減となり、中国では約50%減少しました。
さらにHonda自身も、中国・アジアでは顧客価値がハードウェアからソフトウェアへ移行する中、新興EVメーカーと比較して競争力を失ったことを認めています。
加えて、
円高への反転、
EV関連追加損失、
原材料価格、
米国政策、
四輪事業の低収益性
などもリスクです。
ホンダ株は買いなのか?
ここまでを整理すると、現在のホンダ株はかなり面白い位置にあります。
強気材料
① 純利益は会社予想から約4割上振れ期待
② 第1四半期の利益が非常に強い
③ 二輪事業が圧倒的な収益源
④ PBR約0.5倍
⑤ 配当利回り約4%
⑥ 目標株価を引き上げる証券会社が増加
一方で、
慎重材料
① 株価は5月安値から約4割上昇済み
② 年初来高値に近い
③ アナリスト平均目標株価との差が小さい
④ 四輪事業の構造改革はまだ途中
⑤ 中国市場で苦戦
⑥ 円安による業績押し上げ効果が大きい
という問題があります。
ホンダへの投資を検討する際には、国内最大手のトヨタとの比較も参考になります。業績や収益性、配当、バリュエーションなどから両社を比較した記事もまとめていますので、あわせてご覧ください。
まとめ:ホンダは「割安株」から「業績回復株」へ変われるか
現在のホンダを単純な自動車メーカーとして評価するのは適切ではないと思います。
ホンダの本当の強さは、
世界トップクラスの二輪事業
と、
安定収益を生む金融サービス
です。
この2つが会社全体の収益を支えながら、現在は四輪事業の立て直しを進めています。
株価約1,700円、PBR約0.5倍、配当利回り約4%という数字だけを見ると、依然として割安感があります。
しかし株価はすでに5月安値から約4割上昇しており、業績回復期待もかなり織り込まれています。
そのため筆者が今後最も注目したいのは、
「純利益4,000億円という会社予想が、5,000~5,600億円以上へ再度上方修正されるか」
です。
ここが実現し、さらに四輪事業の収益性改善まで確認できれば、現在の低PBRが修正される可能性があります。
逆に市場が期待する5,600億円前後に届かなければ、「好決算なのに株価が上がらない」という展開も十分考えられます。
したがって現時点のホンダ株は、
「高配当で割安だから買う銘柄」というより、「二輪という強力な収益源を持ちながら、四輪事業の復活に賭ける業績回復銘柄」
として見るのが適切ではないでしょうか。
【参考情報】
・Honda 投資家情報
https://global.honda/jp/investors/
・Honda 決算資料
https://global.honda/jp/investors/library/documents.html
・Honda公式|2027年3月期 第1四半期 決算短信〔IFRS〕(連結)
https://data.swcms.net/file/honda-ir/dam/jcr:bd619e88-b049-4e52-aca6-670ab3081b20/140120260804508592.pdf
・みんかぶ「ホンダ(7267)の株価・アナリスト予想」
https://minkabu.jp/stock/7267/analyst_consensus
※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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