「もう少し上がるかもしれない」
「でも明日は下がるかもしれないから、今日売っておこう」
「かなり下がったから、そろそろ買ってもいいのでは?」
「チャートはあまり良くないけれど、ここまで安くなったなら買いだろう」
私自身、これまでいろいろな企業を調べ、チャートを見て、買ったり売ったりしてきました。
そして最近、ふと思うことがあります。
もしかすると、良い企業を買って3〜4年間何もしなかった方が、一番良かったのではないか。
もちろん、すべての株を放置すればいいという話ではありません。
ただ、投資を続けるほど、「企業を見ること」と同じくらい「自分の心理を見ること」が重要なのではないかと思うようになりました。
「もう少し上がる」と「明日は下がる」の間で揺れる

株価が上昇していると、
「まだ上がるかもしれない」
と思います。
ところが少し利益が乗ってくると、今度は、
「せっかくの利益がなくなるのが怖い」
という気持ちが出てきます。
10万円の含み益が15万円になる喜びよりも、10万円の含み益が3万円に減ることの方が怖く感じる。
その結果、
「十分利益が出たから売っておこう」
と利確します。
利確自体は悪いことではありません。利益を確定するのも立派な投資判断です。
問題は、その後です。
売却した株がさらに10%、20%、30%と上昇すると、
「売らなければよかった」
という気持ちが出てきます。
しかし、売った時点では将来の株価など誰にも分かりません。
つまり私たちは、結果を知った後から過去の判断を評価してしまうわけです。
私自身、住友金属鉱山を3,982円で利確した後、その後の大きな上昇を経験しました。もちろん当時の売却判断が間違いだったとは言い切れませんが、「良い企業を長く持つこと」について改めて考えるきっかけになりました。
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人間は「利益を増やす」より「利益を失う」ことを嫌う
投資では、損失そのものだけでなく、含み益が減ることにも強いストレスを感じます。
例えば100万円で買った株が130万円になったとします。
30万円の含み益です。
その後120万円まで下落すると、まだ20万円も利益があるにもかかわらず、
「10万円損した」
ような気分になります。
実際には100万円が120万円になっているのですからプラスです。
ところが頭の中では、一度見た「130万円」が基準になってしまいます。
これが早めの利益確定につながることがあります。
そして皮肉なことに、業績が伸び続ける優良企業ほど、その後さらに株価が上昇する可能性があります。
下落を避けようとして売ったことによって、大きな上昇まで手放してしまう。
長期投資の難しさは、この心理との戦いなのかもしれません。
「安いから買う」も人間心理
反対に株価が大きく下落すると、
「こんなに安くなったのだから買いでは?」
と思います。
例えば1万円だった株が7,000円になれば、確かに以前より30%安くなっています。
しかし、
1万円だったから7,000円が安いとは限りません。
業績が悪化しているかもしれません。
成長率が落ちているかもしれません。
市場がその企業に付けるPERそのものが変化した可能性もあります。
チャートが下落トレンドなのに、
「これだけ下がったのだから、そろそろ反発するだろう」
と買ってしまう。
すると7,000円が6,000円、5,000円になることもあります。
株価が下がったという事実と、企業価値に対して割安になったということは別です。
ここでも人間は、過去の株価を基準に判断してしまいます。
売った株ほど上がって見える
投資をしていると不思議なもので、
「売った株ばかり上がる」
ように感じることがあります。
もちろん実際には、売却後に下落した株もあるはずです。
ところが、売った直後に急騰した銘柄は強く記憶に残ります。
「あの時売らなければ……」
という後悔があるからです。
一方、5,000円で売却した株が4,000円になっても、
「売っておいてよかった」
と思う程度で、数年後まで覚えていることは少ないでしょう。
成功した判断より、後悔した判断の方が記憶に残りやすい。
これも投資判断を難しくしている一因だと思います。
調べれば調べるほど売買したくなる
企業の決算を調べる。
PERやPBR、ROEを見る。
チャートを見る。
移動平均線を見る。
ニュースを読む。
アナリストの目標株価を見る。
これらはもちろん投資判断に役立ちます。
私自身、企業を調べることには大きな意味があると思っています。
ただ、一つ注意したいことがあります。
情報を集めることと、売買することは別です。
毎日株価を見ていると、何か行動したくなります。
「今日は2%下がった」
「移動平均線を割った」
「悪いニュースが出た」
「日経平均が下落しそうだ」
こうした情報を見るたびに、
「何かしなければ」
と思ってしまいます。
しかし長期投資では、何もしないことも立派な投資判断です。
株価が下がったから「安い」と判断するのではなく、EPSやPER、ROEなどから企業の成長性と株価水準を考えることも大切です。
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3〜4年前に買って、そのまま持っていたら?
ここが最近、私自身が投資について考えるところです。
これまで、
「ここは一度利確しよう」
「下がってきたから買い直そう」
「別の銘柄の方が良さそうだ」
と、さまざまな判断をしてきました。
それによって利益を得られたこともあります。
一方で、早く売り過ぎた銘柄もあります。
そこで考えてしまいます。
数年前に「この会社は良い」と思って買った企業を、そのまま3〜4年間持っていたらどうなっていただろう?
実際に少量の株数で持っていた銘柄がありました。株数が少なかったのでほとんどここ数年見ていなかったのですが、
住友商事:約403%
ENEOS:約250%
ソフトバンク約300%
もう少し多く買っておけば…。もっとも多く買っていれば早い段階で利確している可能性は大ですが。
もちろん業績悪化した企業まで持ち続ける必要はありません。
しかし、
売上が伸びている。
利益が伸びている。
EPSが伸びている。
財務に大きな問題がない。
競争力も失われていない。
最初に買った理由が崩れていない。
それなら、株価が一時的に10%、20%下落したとしても、保有を続けるという選択肢があったはずです。
長期投資とは「株を持つこと」ではなく「企業を持つこと」
株価だけを見ていると、
上がった。
下がった。
高い。
安い。
という判断になりがちです。
しかし株式の向こう側には企業があります。
例えば株価が20%上昇していても、EPSが数年間にわたって伸び続けるなら、必ずしも割高とは限りません。
反対に株価が30%下落していても、業績まで悪化しているなら割安とは限りません。
そう考えると、
「いくらになったら売るか」より、「どんな状態になったら売るか」
を決めておく方が、長期投資には向いているのかもしれません。
例えば、
・成長シナリオが崩れた
・利益成長が止まった
・財務が大きく悪化した
・競争力を失った
・明らかに過熱したバリュエーションになった
・もっと魅力的な投資先が見つかった
こうした理由なら、売却を検討する意味があります。
逆に、
「明日下がりそう」
という理由だけで、長期保有する予定だった企業を売る必要があるのか。
これは自分自身にも問い続けたいところです。
投資で最も難しいのは「待つこと」なのかもしれない
投資を始めた頃は、
「どの株を買えばいいのか」
が一番難しいと思っていました。
しかし長く投資を続けると、それだけではないことに気づきます。
良い企業を見つける。
適正な価格で買う。
そして、
何もしない。
株価が下がっても企業価値を確認する。
上がってもすぐ利益確定しない。
ニュースが出ても慌てない。
そして企業が成長する時間を待つ。
これが意外に難しい。
株式投資では、知識が増えるほど良い判断ができるとは限りません。
情報が増えたことで売買回数が増え、かえって企業の長期的な成長を取り逃がすこともあります。
投資では、企業分析やチャート分析だけでなく、「自分がなぜその判断をしたのか」を考えることも大切だと感じています。
投資と人間心理についてもう少し深く考えてみたい方には、モーガン・ハウセル著『サイコロジー・オブ・マネー』も参考になります。
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まとめ|分析する対象は企業だけではない
企業分析では、売上、利益、EPS、PER、ROE、財務などを調べます。
しかし投資家がもう一つ分析した方がいいものがあります。
それが、
「自分自身」です。
なぜ今売りたいのか。
企業価値が変わったからなのか。
それとも、利益が減るのが怖いだけなのか。
なぜ今買いたいのか。
企業が割安だからなのか。
それとも、以前より株価が下がったから安く見えているだけなのか。
こうやって自分の心理を一歩引いて見ることができれば、投資判断も少し変わるかもしれません。
私自身、いろいろ調べ、いろいろ売買してきました。
だからこそ最近思います。
良い企業を見つけて買った後は、「何もしない」という選択肢をもっと大切にしてもよかったのではないか。
3〜4年間企業が成長する時間を与える。
それは何も考えていない「放置」ではありません。
企業を調べた上で、投資した理由が崩れていないことを確認しながら待つ。
つまり、
「放置」と「長期保有」は似ているようで違う。
そして長期投資で本当に難しいのは、銘柄を選ぶこと以上に、
自分の感情に邪魔されず、企業の成長を待つことなのかもしれません。
参考資料・公式サイト
- 金融庁も資産形成において「長期・積立・分散投資」を有効な選択肢の一つとして紹介しています。
金融庁「長期・積立・分散投資の考え方」 - 長期保有するかどうかを判断するためには、日々の株価だけではなく、その企業がどのように利益を生み出しているのかを見ることも大切です。
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