「マエストロ」グリーンスパンは金融危機から何を学んだのか?投資家が失敗から学ぶということ

マエストロ グリーンスパンに学ぶ 金融危機から何を学んだのか? 資産運用

「自分の考え方が間違っていた」と認めることは、簡単ではありません。

ましてや、それが世界の金融政策を長年動かしてきた人物なら、なおさらでしょう。

今回、日本経済新聞の「グリーンスパン流にどう学ぶか」という記事を読み、非常に印象に残ったことがありました。

それは、元FRB(米連邦準備制度理事会)議長のアラン・グリーンスパン氏が、2008年の世界金融危機を前に自らの考え方の限界を突きつけられた後も、「なぜ間違えたのか」を考え続けた姿勢です。

これは投資をする私たちにとっても、大きなヒントになるのではないでしょうか。

「マエストロ」と呼ばれたグリーンスパン

グリーンスパン流・失敗から学ぶ6ステップ

アラン・グリーンスパン氏は、1987年から2006年まで約18年半にわたってFRB議長を務めました。

ブラックマンデーやアジア通貨危機、ITバブル、米同時多発テロなど、数々の危機に対応し、その金融政策運営から「マエストロ(名指揮者)」とも呼ばれた人物です。

長期間にわたって米国経済の金融政策を担ったことから、当時は絶大な評価を受けていました。

ところが、その評価を大きく変える出来事が起こります。

2008年の世界金融危機、いわゆるリーマン・ショックです。

なぜ世界最高峰の専門家たちも金融危機を予測できなかったのか

リーマン・ショックでは、世界中の金融機関や投資家が大きな打撃を受けました。

そして問題になったのが、

「なぜFRBをはじめとする世界最高峰の専門家たちは、これほど大きな金融危機を事前に予測できなかったのか」

ということです。

グリーンスパン氏自身も厳しい批判を受けました。

特に問題となったのが、

「金融機関は自らの利益を守るため、過度なリスクを自然に避けるはずだ」

という市場への信頼です。

しかし実際には、住宅価格の上昇期待や利益を求める金融機関の行動が重なり、金融システム全体に巨大なリスクが積み上がっていました。

金融危機は、それまで正しいと思われていた前提そのものを揺さぶったのです。

グリーンスパンがすごかったのは「間違えた後」

個人的にこの記事で最も興味深かったのは、グリーンスパン氏が金融危機を予測できなかったことではありません。

むしろ、その後です。

彼は自分の理論を守ることだけに終始するのではなく、

「なぜ自分たちは間違えたのか」

を改めて考え始めます。

そして注目したのが、人間の心理でした。

市場を動かしているのは数字だけではない

経済学では、人間がある程度合理的に判断することを前提としてモデルを構築することがあります。

ところが実際の金融市場では、人間は必ずしも合理的に行動しません。

株価が上昇すると、

「まだ上がるのではないか」

と考えて買いたくなります。

反対に株価が暴落すると、

「もっと下がるかもしれない」

という恐怖から、本来売る必要のない資産まで売ってしまうことがあります。

つまり市場には、

・欲望
・恐怖
・熱狂
・群集心理
・過度な楽観
・過度な悲観

といった人間の感情が大きく影響しています。

グリーンスパン氏は金融危機後、こうした「合理的とは言えない人間の行動」も経済予測に取り込めないかと考えるようになります。

これは非常に重要な視点だと思います。

『サイコロジー・オブ・マネー』が教えてくれる「人間心理」

こうした市場と人間心理の関係を考えるうえで、非常に興味深い一冊があります。

モーガン・ハウセル著『サイコロジー・オブ・マネー』です。

この本の面白いところは、「どうすれば株で儲けられるのか」という投資テクニックを中心にした本ではないことです。

むしろ、

「なぜ人はお金を前にすると合理的ではなくなるのか」

という人間の心理や行動に焦点を当てています。

同じ株価下落を見ても、

「安くなったから買おう」

と考える人もいれば、

「もっと下がるかもしれない」

と怖くなって売る人もいます。

同じ数字を見ているにもかかわらず、行動が違う。

そこには、その人がこれまで経験してきた相場や成功・失敗、恐怖、欲望などが影響しています。

つまり投資とは、数字だけを分析するゲームではありません。

数字を見て判断する「人間」そのものを理解する必要があるのです。

これはグリーンスパン氏が金融危機後、人間の非合理的な行動や心理に目を向けるようになったこととも重なります。

リーマン・ショックでは、

「住宅価格は簡単には下がらない」
「高格付けの商品だから安全だ」
「金融機関は自分たちでリスクを管理するだろう」

といった前提が崩れていきました。

市場が熱狂しているときには、冷静な数字よりも「まだ上がる」という物語の方が人を動かすことがあります。

反対に暴落時には、

「どこまで下がるかわからない」

という恐怖が投資家を動かします。

だからこそ投資では、企業の業績やPER、金利などの数字を見るだけではなく、

「今、市場参加者は何を恐れているのか」
「何に熱狂しているのか」
「自分自身もその心理に流されていないか」

を見ることが重要なのだと思います。

『サイコロジー・オブ・マネー』は、こうした「数字の裏側にいる人間」を考えるきっかけになる一冊です。

▶ 『サイコロジー・オブ・マネー』の詳しい内容はこちら

▶ ダイヤモンド社『サイコロジー・オブ・マネー』公式ページ

投資では「正しい分析=正しい株価」にはならない

これは個人投資家にもそのまま当てはまります。

企業の業績を分析して、

「この会社は割安だ」

と判断したとします。

しかし、だからといって明日から株価が上昇するとは限りません。

反対に、

「さすがに割高では?」

と思う株が、さらに30%、50%と上昇することもあります。

株式市場には企業業績だけではなく、

投資家心理、金利、為替、信用取引、需給、テーマ性、海外投資家の資金、AI取引など、

さまざまな要因が絡み合っているからです。

だからこそ、

「自分の分析が正しい=市場もその通り動く」

と思い込むことは危険です。

市場では企業業績だけでなく、投資家心理や需給も株価を大きく動かします。

特に信用取引では、「信用買い残」「信用売り残」「信用倍率」を見ることで、将来の売り圧力・買い戻し圧力を考えるヒントになります。

信用倍率と株価の関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。

▼ 信用倍率から株価をどう読む?信用買い・信用売りと需給の関係

私自身もリーマン・ショックで大きな失敗を経験した

実は私自身にも、2008年のリーマン・ショックについて忘れられない経験があります。

当時、私は投資を始めたばかりで、FX取引をしていました。

そして金融市場が急変する中、わずか1週間足らずで数百万円を失いました。

投資を始めたばかりだったこともあり、当時は本当に絶望的な気持ちになったことを覚えています。

「投資なんてやらなければよかった」

と思ったこともありました。

「大げさではなく、『人生が終わった』と思うほど落ち込みました。大きな損失によって、家族との関係にも少なからず影響があったように思います。」

しかし、今振り返ると、この経験がその後の投資に対する考え方を大きく変えたように思います。

相場は自分の予想通りには動かない。

レバレッジをかければ、利益だけでなく損失も急激に拡大する。
(これ以降レバレッジ取引は一切やりませんでした。)

そして何より、

「絶対にこうなる」

と思い込むことが非常に危険だということです。

リーマン・ショックを知るために30回以上見た映画

私がリーマン・ショックについて考えるとき、もう一つ外せない作品があります。

映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』です。

この映画は、アメリカの住宅市場が好調に見えていた中、その裏側に潜んでいたサブプライムローンの問題に気づき、住宅バブルの崩壊を予測した投資家たちを描いた実話ベースの作品です。

私はこの映画が非常に好きで、これまでに30回以上見ています。

なぜ何度も見てしまうのか。

単純に投資映画として面白いということもありますが、見るたびに新しい発見があるからです。

住宅価格は上がり続ける。

格付けの高い金融商品だから安全。

大手金融機関が扱っているのだから大丈夫。

当時、多くの人が「当たり前」だと思っていた前提を、一部の投資家たちは疑いました。

そして実際に住宅ローンの中身を調べ、自分たちの目で確かめていきます。

この姿勢は、今回取り上げたグリーンスパン氏の

「自分の前提を疑う」
「なぜ間違えたのかを検証する」

という学び方とも重なるように思います。

私自身、2008年のリーマン・ショックではFX取引で大きな損失を経験しました。

だからこそ、この映画を見るたびに、

「市場の常識は本当に正しいのか」
「自分が信じている前提は間違っていないか」
「もし予想と反対に動いたらどうするのか」

と考えさせられます。

30回以上見ても飽きないのは、この映画が単なる「金融危機で儲けた投資家の物語」ではなく、投資における思い込みや群集心理、そして自分で調べて考えることの重要性を描いているからかもしれません。

リーマン・ショックがなぜ起こったのか、当時のウォール街で何が起きていたのかを映画を通して知りたい方には、ぜひ一度見ていただきたい作品です。

▶ 『マネー・ショート 華麗なる大逆転』をAmazonで見る

失敗しないことより「失敗から何を変えるか」

投資をしている以上、すべての判断を当てることは不可能です。

私自身も、

「あの株を売らなければよかった」

「もう少し早く買えばよかった」

「なぜあの時買ったのだろう」

と思うことがあります。

しかし重要なのは、失敗そのものではないのかもしれません。

重要なのは、

なぜその判断をしたのか?

何を見落としていたのか?

当時の前提は正しかったのか?

同じ状況が起きたら次はどうするのか?

と振り返ることです。

グリーンスパン氏の姿勢から学べるのは、まさにここではないでしょうか。

投資では「予想」より「間違った時の対応」が重要

私たちはつい、

「日経平均はいくらになるのか」

「米国株は暴落するのか」

「この銘柄は上がるのか」

と未来を当てようとしてしまいます。

もちろん予想すること自体は悪くありません。

しかし投資で本当に重要なのは、

「予想が外れたらどうするか」

まで考えておくことだと思います。

例えば、

一つの銘柄に資金を集中させない。

現金をある程度残しておく。

レバレッジをかけすぎない。

長期・分散投資を基本にする。

投資した理由が崩れたら改めて判断する。

こうした仕組みを作っておけば、予想が外れても致命傷を避けることができます。

未来を完全に予測することよりも、

「自分の予想は間違えることがある」

という前提で投資する。

リーマン・ショックを経験した今、私はこの考え方が非常に重要だと思っています。

AI時代だからこそ「自分の前提を疑う力」が重要になる

今回の記事では、AI時代についても考えさせられました。

現在はAIを使えば、企業分析や決算分析、経済データの整理など、以前ならかなりの時間が必要だった作業を短時間で行えるようになっています。

しかしAIが高度になっても、

「何を前提として分析しているのか」

「その前提自体が間違っていないか」

という問題は残ります。

高度なモデルでも、前提が間違っていれば答えも間違える可能性があります。

2008年の金融危機で世界の金融モデルが直面した問題と、どこか似ています。

AIを使う時代だからこそ、

AIの答えをそのまま信じるのではなく、

「本当にそうだろうか?」

と考える姿勢がますます重要になるのではないでしょうか。

まとめ|優れた投資家とは「間違えない人」ではない

グリーンスパン氏は、約18年半にわたってFRB議長を務め、「マエストロ」とまで呼ばれました。

それでも2008年の金融危機を巡って、自らの考え方の限界に直面しました。

しかし興味深いのは、その後も学ぶことをやめなかったことです。

成功

大きな失敗

自分の前提を疑う

原因を検証する

新しい知識を取り入れる

考え方を修正する

この繰り返しこそが、本当の意味での「学ぶ」ということなのかもしれません。

私自身、2008年のリーマン・ショックでは大きな損失を経験しました。

もちろん、できることなら経験したくなかった失敗です。

しかし、その失敗があったからこそ、現在の投資に対する考え方につながっている部分もあります。

投資で一度も失敗しないことは、おそらく不可能です。

大切なのは、

「失敗しない投資家になること」ではなく、

「失敗したときに学び、次の判断を変えられる投資家になること」。

グリーンスパン氏の歩みから、そんなことを改めて考えさせられました。

参考・公式リンク

■ Federal Reserve History|Alan Greenspan(公式)

グリーンスパン氏のFRB議長在任期間や経歴を確認する一次資料です。

Federal Reserve History「Alan Greenspan」

■ 『The Map and the Territory』

金融危機後、グリーンスパン氏が経済予測や人間行動について改めて考察した著書です。

Penguin Random House「The Map and the Territory」

■ 日本経済新聞

今回の「グリーンスパン流にどう学ぶか」が記事作成の出発点です。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB249L10U6A820C2000000

※本記事は新聞記事および公開情報を参考に、筆者自身の投資経験・考察を加えてまとめたものです。特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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