世界の航空機の7割がリースへ?日本の航空機リース関連株4社の投資妙味を比較

航空機リース関連株4社を比較する記事のアイキャッチ画像。三菱HCキャピタル、東京センチュリー、オリックス、三井住友FGとアイルランドの航空機リース市場を紹介。 企業分析
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2026年10月9日の日本経済新聞に「世界の航空機、7割がリースへ」という興味深い記事が掲載されていました。

航空機と聞くと、ANAやJALといった航空会社、あるいはボーイングやエアバスなどの航空機メーカーを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

しかし、今回注目したいのは、航空会社でも航空機メーカーでもありません。

航空機を保有し、航空会社に貸し出す「航空機リース会社」です。

世界の航空機リース市場が拡大するなか、日本の金融機関やリース会社にもビジネスチャンスが生まれています。

さらに興味深いのは、世界の航空機リース会社の上位3社が、すべてアイルランドに本社を置いていることです。

なぜ航空機リース会社はアイルランドに集中しているのでしょうか。

そして、この市場の成長は日本の関連企業にとって、どの程度の投資機会になるのでしょうか。

今回は、航空機リース市場の仕組みと成長性、アイルランドに企業が集まる理由を整理したうえで、日本の関連株4社を比較してみたいと思います。

世界の航空機リース市場で何が起きているのか?

航空機リースの仕組みと収益構造を解説した図。市場拡大の見通し、アイルランドに大手企業が集中する理由、日本の関連株4社の特徴と投資リスクを比較。

日本経済新聞の記事によると、現在、世界の航空機の約半数がリースで運航されており、今後10年で3分の2以上に拡大するとの見方が紹介されています。

見出しでは「7割」という数字が使われています。

これは将来の予測であり、現時点で世界の航空機の7割がリースされているという意味ではありません。

では、なぜ航空会社は航空機を購入せず、リースを利用するのでしょうか。

① 航空機の購入には巨額の資金が必要

航空機は1機当たり数十億円から数百億円規模の高額な資産です。

航空会社がすべての機体を自社で購入すれば、巨額の資金が必要になります。

一方、リースを利用すれば、航空会社は初期投資を抑えながら運航機材を確保できます。

② 航空需要の変化に対応しやすい

航空需要は景気、観光需要、国際情勢などによって大きく変動します。

リース契約を活用すれば、契約期間や条件に応じて、機材構成を調整しやすくなります。

③ 航空機の供給不足が続いている

近年は航空機メーカーの生産遅延などによって、新しい航空機の調達に時間がかかっています。

航空会社が必要な機体を確保するために、リース会社の存在感が高まっています。

つまり、航空機リース市場の拡大には、航空需要の成長だけでなく、航空会社が資金効率を重視するという構造的な背景があるのです。

航空機リース会社はどのように利益を得るのか?

航空機リース会社の主な収益源は3つあります。

① リース料収入

航空機を航空会社に貸し出し、契約に基づいてリース料を受け取ります。

長期契約が多いため、比較的安定した収入を見込みやすい事業です。

ただし、航空会社の経営悪化によってリース料の回収が難しくなるリスクもあります。

② 航空機の売却益

リース会社は航空機を長期間保有するだけではありません。

中古航空機市場の状況を見ながら、保有機体を売却することでも利益を得ます。

航空機の供給不足が続けば、中古機の需要が高まり、売却益を得やすくなる可能性があります。

一方、供給不足が解消すれば、中古機価格が下落する可能性もあります。

③ 航空機の管理・運用手数料

近年、注目したいのが航空機の資産管理ビジネスです。

リース会社は、自社で航空機を保有するだけでなく、投資家が保有する航空機の管理や売買、リース契約の運営なども行っています。

この事業では、航空機を自社で購入する場合と比べ、少ない自己資本で手数料収入を得られる可能性があります。

私は今後、航空機リース会社を評価するうえで、「航空機を保有して稼ぐ事業」と「航空機を管理して稼ぐ事業」のバランスが重要になると考えています。

リース業界の仕組みをもっと詳しく知りたい方へ

航空機リースを調べてみると、リース会社は単にモノを貸し出すだけでなく、資金調達、資産管理、売却などを組み合わせた金融ビジネスであることが分かります。

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なぜ世界の航空機リース会社はアイルランドに集中するのか?

今回の記事で特に興味深かったのが、世界の航空機リース会社のランキングです。

日本経済新聞に掲載された上位5社は次のとおりです。

順位企業名本社所在地機数
1エアキャップアイルランド2,012
2SMBC Aviation Capitalアイルランド1,818
3アボロンアイルランド1,145
4DAEキャピタルUAE1,021
5BOCアビエーションシンガポール795

※2025年9月末時点の保有・管理機数などを基にした記事掲載の数値。

驚くことに、上位3社がすべてアイルランドに本社を置いています。

アイルランドは航空機の製造大国でも、巨大な航空市場を持つ国でもありません。

それにもかかわらず、なぜ世界の航空機リース産業の中心地になったのでしょうか。

① 航空機リース産業が生まれた歴史的背景

アイルランドの航空機リース産業の発展には、トニー・ライアンという人物が大きく関わっています。

1975年、アイルランドの航空会社エアリンガスに勤務していたトニー・ライアンらが、航空機リース会社GPA(Guinness Peat Aviation)を設立しました。

GPAはその後、世界有数の航空機リース会社へ成長しました。

1990年代には経営危機も経験しましたが、同社で育った人材やノウハウが他の企業へ広がりました。

この歴史が、現在のアイルランドにおける航空機リース産業の基盤となっています。

② 国際ビジネスに適した税制

アイルランドの一般的な事業所得に対する法人税率は12.5%です。

ただし、大規模多国籍企業グループには15%の最低課税が適用される場合があります。

航空機リースは、アイルランドの会社が所有する航空機を、アメリカやアジアなど世界中の航空会社に貸し出す国際ビジネスです。

そのため、法人税だけでなく、減価償却や租税条約、国際取引に伴う税務上の取り扱いも重要になります。

税制面の優位性は、アイルランドに航空機リース会社が集まる理由の一つです。

③ 航空機の所有権を保護する法制度

航空機は非常に高額な資産です。

仮に貸出先の航空会社が倒産した場合、リース会社が機体を回収できるかどうかは重要な問題になります。

アイルランドは、航空機などの国際的な担保権を保護する「ケープタウン条約」に対応した法制度を整えています。

また、航空機の国際登録制度に関係する専門機関も集積しています。

こうした制度は、航空機を資産として保有する金融機関や投資家にとって重要です。

④ 金融・法務・会計の専門人材が集積

航空機リースは、単純に航空機を貸し出すだけのビジネスではありません。

航空機の購入、資金調達、契約管理、機体の売買、整備状況の確認など、幅広い専門知識が必要になります。

アイルランドには、航空金融、法律、税務、会計、航空機管理に精通した専門家が集まっています。

企業が集まることで専門人材が育ち、さらに新しい企業が集まるという好循環が生まれているのです。

⑤ 世界の金融機関や投資家とのネットワーク

航空機リースには巨額の資金が必要です。

アイルランドには航空機リース事業に関わる銀行、投資ファンド、法律事務所、資産管理会社などが集積しています。

こうしたネットワークが、航空機の売買や資金調達を円滑にしています。

つまり、アイルランドの強みは税率の低さだけではありません。

歴史、税制、法制度、専門人材、金融ネットワークが一体となった産業集積こそが、最大の競争力だと考えられます。

日本企業にとっての意味

ここで注目したいのは、日本の金融機関やリース会社も、このアイルランドの産業集積を活用していることです。

日本企業の資金調達力と、アイルランドに蓄積された専門知識を組み合わせることで、国際競争力を高められる可能性があります。

航空機リース会社の競争力は、単純な資金力だけでは決まらないということです。

航空機リース市場の成長で注目したい日本株4社

それでは、航空機リース市場の拡大によって恩恵を受ける可能性がある日本企業を見ていきます。

今回取り上げるのは、三菱HCキャピタル、東京センチュリー、オリックス、三井住友フィナンシャルグループの4社です。

① 三菱HCキャピタル(8593)|航空機とエンジンの両方に強み

三菱HCキャピタルは、国内外でリース・金融サービスを展開する大手企業です。

航空機関連事業では、航空機リースに加えて、航空機エンジンのリース、エンジンの解体・部品販売なども手掛けています。

同社の特徴は、航空機そのものだけでなく、エンジンのライフサイクル全体に関わる事業を展開していることです。

2024年度の航空事業のセグメント利益は472億円で、グループ全体のセグメント利益1,351億円に対して約35%に相当します。

航空事業の存在感が大きいことが分かります。

投資妙味

航空機リース市場の拡大に加えて、エンジンリースや部品関連事業の成長も期待できます。

航空機は機体だけでなく、エンジンの整備や交換にも大きな費用がかかります。

そのため、航空機の運航が増えることは、エンジン関連事業にとっても追い風になり得ます。

一方、航空機関連事業への依存度が一定程度あるため、航空業界の不況や資産価格の下落には注意が必要です。

② 東京センチュリー(8439)|航空機売却益の拡大に注目

東京センチュリーは、航空機リース会社Aviation Capital Group(ACG)を傘下に持っています。

2027年3月期第1四半期のトランスポート部門では、セグメント利益が前年同期の約35億円から122億円へ大きく増加しました。

増益要因には、航空機事業の機体売却益の増加などが挙げられています。

これは、航空機リース市場の好環境が実際の利益に結びついている事例といえます。

投資妙味

航空機リース市場が拡大するなか、リース料収入だけでなく、機体の売却益も期待できます。

ただし、売却益は毎期安定して発生するものではありません。

好調な四半期決算だけを見て、利益成長がそのまま継続すると判断するのは避けたいところです。

今後は、リース料収入による継続的な利益と、機体売却による一時的な利益を分けて確認したいと考えています。

③ オリックス(8591)|航空機を含む分散型の資産運用ビジネス

オリックスは、金融、不動産、保険、環境エネルギーなど、幅広い事業を展開しています。

航空機関連では、ORIX Aviationなどを通じて航空機リースや航空機資産の管理・運用を行っています。

同社の特徴は、航空機リースだけに依存していないことです。

投資妙味

航空機リース市場の成長を取り込みながら、他の事業からも収益を得られる点が魅力です。

また、航空機の管理・運用事業が拡大すれば、手数料収入の増加も期待できます。

一方で、オリックス全体の事業規模は大きいため、航空機リース事業が好調でも、株価全体への影響が限定的になる可能性があります。

航空機リース市場の成長だけを狙う投資というより、複数の事業を持つ金融・資産運用企業として評価する必要がありそうです。

④ 三井住友FG(8316)|世界有数の航空機リース事業を持つ金融グループ

三井住友フィナンシャルグループは、三井住友ファイナンス&リースなどを通じて、SMBC Aviation Capitalに関わっています。

同社は世界有数の航空機リース会社です。

2026年3月期には、リース収入が約19億7,300万ドル、税引前利益が約7億700万ドルとなりました。

また、航空機の管理・運用事業も拡大しています。

投資妙味

世界的な航空機リース市場の成長を取り込める事業基盤を持っていることが強みです。

資金調達力や航空会社との取引関係も競争優位性につながります。

ただし、三井住友FGは銀行を中心とした巨大金融グループです。

株価を左右する主な要因は、国内外の金利、銀行業務の収益、信用コストなどになります。

航空機リース事業の成長はプラス材料ですが、航空機リースを主目的として投資する場合には、事業全体に占める利益の割合を確認する必要があります。

日本の航空機リース関連株4社を比較

ここまでの内容を整理してみます。

企業主な強み投資上の注目点
三菱HCキャピタル航空機・エンジン事業航空関連事業の利益成長
東京センチュリーACGによる航空機リースリース収入と機体売却益
オリックス多角化・資産運用分散された収益基盤
三井住友FG世界有数のリース事業大規模な事業基盤と資金調達力

この4社は、同じ航空機リース関連銘柄でも、投資対象としての性格が異なります。

航空機リース事業の成長を重視するなら、三菱HCキャピタルや東京センチュリー。

航空機リースを含む幅広い金融・資産運用ビジネスを評価するなら、オリックス。

銀行事業を中心に航空機リースの成長も取り込みたいなら、三井住友FG。

このように分けて考えると、投資目的に合った銘柄を選びやすくなります。

航空機リース会社への投資で注意したい4つのリスク

航空機リース市場には成長余地がありますが、必ずしもリース会社の株価が上昇するとは限りません。

特に注意したいのは次の4点です。

① 金利上昇リスク

リース会社は航空機を購入するために多額の資金を調達します。

借入金利が上昇すると、調達コストが増え、利益が圧迫される可能性があります。

既存契約のリース料に金利上昇分をすぐに転嫁できるとは限りません。

航空機リース会社の収益を考えるうえでは、金利の動きも重要です。
日本とアメリカの金利の違いや、金利変動が投資に与える影響については、こちらの記事でも整理しています。
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② 航空会社の経営悪化

景気後退や燃料価格の高騰などによって航空会社の経営が悪化すると、リース料の未回収や機体の返却が発生する可能性があります。

③ 航空機の資産価値下落

航空機の供給不足が解消した場合、中古機価格が下落する可能性があります。

また、新型機の普及によって旧型機の資産価値が低下することも考えられます。

④ 為替変動リスク

航空機リース契約は米ドル建てが多く、為替変動の影響を受けます。

円安は海外事業利益の円換算額を押し上げる場合がありますが、外貨建て負債やヘッジの状況によって影響は異なります。

投資判断ではPERや配当利回りだけでなく、ROAにも注目したい

リース会社を分析する場合、私はPERやPBR、配当利回りに加えて、ROA(総資産利益率)を確認したいと考えています。

ROAは、企業が保有する資産を使って、どれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す指標です。

例えば、1兆円の資産を保有する企業が100億円の利益を生み出した場合、ROAは1%です。

航空機リース会社は多額の資産を保有するため、わずかなROAの改善でも利益への影響が大きくなります。

ただし、ROAが高ければ必ず優良企業というわけではありません。

借入金の規模や資産の評価方法、売却益の有無なども確認する必要があります。

投資判断では、次のような項目を組み合わせて比較したいところです。

  • PER・PBR:現在の株価に割高感がないか
  • ROE・ROA:資本や資産を効率よく活用できているか
  • 配当利回り・配当性向:株主還元に無理がないか
  • 有利子負債・調達金利:金利上昇への耐性はあるか
  • セグメント利益:航空機関連事業がどれだけ利益に貢献しているか

航空機リース市場が成長していても、すでに株価に成長期待が織り込まれていれば、投資妙味は小さくなります。

「成長する業界」と「投資すべき株価」は分けて考える必要があります。

航空機リース会社に限らず、企業の成長性と金利環境を合わせて考えることは、株式投資において重要です。
AI投資の拡大を例に、金利上昇と日本株の関係を考えた記事もあります。
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私が特に注目したいのは三菱HCキャピタルと東京センチュリー

今回、航空機リースというテーマから日本企業を調べてみて、特に興味を持ったのは三菱HCキャピタルと東京センチュリーです。

三菱HCキャピタルは、航空機リースだけでなく、エンジンリースや部品関連事業まで展開しています。

航空機の運航が続く限り、エンジンの整備や交換需要は発生します。

そのため、航空機リース市場の拡大だけでなく、航空機のライフサイクル全体から利益を得られる事業構造に魅力を感じます。

一方、東京センチュリーは、航空機の売却益が実際に決算へ反映されている点が興味深いところです。

ただし、売却益は変動が大きいため、継続的な収益力を確認する必要があります。

現段階では、どちらの企業が割安かまでは判断できません。

今後、両社のPER、PBR、配当利回り、ROE、航空事業の利益推移を比較し、株価水準も含めて投資判断を深めたいと考えています。

まとめ|航空機リースは長期投資のテーマになり得るか?

今回の記事を通じて、航空機リースが世界的に成長している金融ビジネスであることが分かりました。

特に印象に残ったのは、航空機を保有して貸し出すだけでなく、航空機の売買や管理・運用によって収益を得るビジネスへと広がっている点です。

また、世界の航空機リース会社がアイルランドに集中している背景には、税制だけでなく、歴史、法制度、専門人材、金融ネットワークといった複数の要因があることも分かりました。

日本企業は、こうしたアイルランドの産業集積と日本の資金調達力を組み合わせることで、世界市場に参入しています。

航空機の需要が拡大し、航空会社が資金効率を重視する流れが続けば、リース会社の役割はさらに大きくなる可能性があります。

ただし、リース会社は金利や景気、航空機の資産価値に左右される事業でもあります。

長期投資の対象として考えるなら、単純な市場成長率だけでなく、各社の収益構造と財務健全性を確認することが欠かせません。

私は今回、航空機リースという切り口から、普段はあまり意識していなかったリース会社の事業内容を知ることができました。

ニュースをきっかけに業界を調べ、関連企業を比較する。

こうした積み重ねが、投資先を見極める力につながるのではないかと思っています。


※本記事は2026年10月9日の日本経済新聞および各社の公開情報を参考に作成しています。記事中の数値は記載した対象期間のものであり、最新の株価や投資指標を示すものではありません。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

参考資料・公式サイト

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